第49話
「生き物は厄介だな、行動が予測できねー」
カルダのその言葉は、隼人には痛いほどわかった。
先ほど、尻尾で不意を突かれ吹き飛ばされたばかりだった。
「ったく、楽にはとはいかねーか」
カルダは、そう言葉を吐き捨てると、また歩き出すのだった。
◇
相変わらず彼らは、土の大地を歩いていた。そこには目標物になるようなものも何もなく、ただひたすら歩くしかなかった。
「きりがないな、どこまで行っても土ばかりだ」
カルダは、何もないその光景にげんなりしていた。何もないと、思考も止まり、考えすら浮かんでこなかった。
「高台でもあれば、周りを見渡せるんだけどね」
「ねーよ、そんなもの」
すると、相沢は何かを思いついたように手をたたく。
「そうだノーク君、カルダさんに肩車してもらったら?」
「そんなことで……」
「するー、するするー」
カルダは否定しようとしたけど、ノークの輝くような眼を見て、それを否定するわけにはいかなくなってしまった。
仕方なくカルダは腰を落とし、ノークを担ぎ上げると、肩車をするのだった。
その時のノークの楽しそうな顔と言ったらなかった。
ノークはすっかりはしゃぎ、足をバタバタとさせていた。
「おとなしくしねぇと落とすぞ」
ノークはカルダのその言葉を聞いているのか聞いていないのか、ほんとに楽しそうだった。
そして、しばらく経った後だった。
「なんだあれ」
ノークが前方を指さし、何かを見つけたらしい。
「ん?どうした」
ノークは、ただ前方を見つめるだけで、それ以上の情報は得られそうになかった。
仕方なくカルダは、目を凝らして、前方を見据える。
すると、土が盛り上がり、何かが近づいてきているように見える。
「ソイルワーム」
「まずい、一か所に固まるな!逃げ回れ!」
その号令に皆が散り散りになり、走り出した時だった。
そいつは地中から土を巻き上げ、勢いよく飛び出すと、大きな口を広げ、食いつこうとする。
相沢は間一髪でそれを逃れるのだった。
「立ち止まるな!逃げ回れ!」
ソイルワームは地中を移動して、突然飛び出すため、予測がつかない。
「このままじゃ体力が持たねぇ」
カルダは走りながら考える。何か策はないかと、自分が持つのはダガー、隼人の武器は変幻自在と言えど近接用。
エレガント、それだ。
「相沢!俺がおとりになる、口の中に打ち込め」
カルダはそう言うと、その場でじっと止まり、神経を研ぎ澄ませる。いつ飛び出してきてもいいように。
やがて、地を震わせ、それを合図にカルダが飛びのくと、次の瞬間そいつは大口を開けて、姿を現す。
そして、捕獲に失敗すると、また地中へと帰っていく。
「何してる!相沢!」
「無理よ、照準が合わない」
ギンッ
その時だった、後方で、鈍い音が響いたかと思うと、隼人がトンファーをクロスさせ、その大口を防いでいた。
「相沢!急げ!」
相沢は急いで駆けつけ、隼人の間近に立つと、ソイルワームの口内に近距離射撃をお見舞いする。
そして、数発打ち込むと、そいつの口の中に火が付き、奇怪な悲鳴を上げると、その場を立ち去って行った。
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