第48話


 そこには確かに街があった。

 その街は、一言で言うなら茶色一色で、全てが土に覆われていた。道路も建物も。


「街だ、日陰だ、いや、酒だ、酒を飲ませろ」


「私たち未成年よ」


「お前らはジュースでも飲んでろ」


 むっとする相沢を気にも止めず、カルダは酒屋へと走るのだった。

 仕方なく、残りの四人は後をつけるのだった。



「いらっしゃい」


 カルダはカウンターにつくと、さっそく注文していた。

 相沢には、その姿は、まるで舌を出した犬の様に見えるのだった。


「ぷはぁ、生き返るぜ」


「お客さんたちは観光で訪れたんで?」


「私たち、土のエレメントを探しに来たんです」


「土のエレメント?」


 そう発し、マスターは考え込んでしまう。


「ご存知、ないですか?」


「はるか南西にあるたぁ聞いたことはあるが」


 その言葉に、相沢はカウンターを乗り出した。


「その、正確な位置はわかりますか?」


「さぁねぇ」


「そう、ですか。

 詳しい方はご存じないですか?」


「すまねぇが、それも分からねぇ」


「ありがとうございました」


 方向を聞いた時の相沢の顔とは打って変わり、今はがっかりという表情が顔じゅうに現れていた。


 ただ、飲物を飲んだおかげか、みんなの顔には笑顔が戻り、カルダは酔った勢いで、ノークをからかって遊んでいた。


 そして酒屋を出た五人は、情報を求め、街中を聞いて回ったのだけど、結局有力な情報はつかめず、南西ということしかわからなかった。


「水も手に入れたし、探してみるしかないな。悠長なことをしてる時間もないしな」


 カルダのその言葉に、一行はまた土の大地へと乗り出すのだった。





 ザザザザザ


「隼人構えろ」


 土の大地に出てしばらくたったころだろうか、土ぼこりを上げ、彼らに近づくものがあった。

 それは、固い皮膚に覆われ、地面を這うように接近してくる。


「トカゲ、でかい」


 それは、高さにすると膝の関節ほどの高さまであり、体調は大人三人分といったところだろうか。

 突進してくるトカゲに対し、カルダは地面で体を回転させよける。


 起き上がるとすでにトカゲの追撃が来ていた。

 そいつは口を大きく開けると、カルダを噛みつきにかかる。


 ギンッ


 カルダは寸ででトカゲの歯にダガーを交えると、その体勢でブルブルと耐える。

 隼人は、トカゲの胴体に殴りかかるもそれは固く、次の瞬間には、尻尾で弾き飛ばされてしまう。


「カルダ、目だ」


 カルダははっとなり、左のダガーでそいつの目を思いきりつく。

 作戦は成功し、そいつは目から血を吹き出すとその場にのたうち回るのだった。


 そして、隼人は、そいつの頭に何度も高速回転させたトンファーをお見舞いするとようやく静かになるのだった。

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