第45話


 彼らが外に出ると、雨が降っていた。

 空はすっかり暗くなり、灰色の重たい雲が空を埋め尽くしていた。


「少し様子を見よう、下手に行動するのは危険だ」


 カルダのその言葉に四人は引き返し、また法陣の元へと戻るのだった。

 隼人はというと、相変わらず、空から降りしきる雨に見入っていた。


 カルダはそこらに散らばる枝やら、枯葉やらをかき集めると、また器用に簡素な焚火を作り上げた。


 相沢は、しばらく経っても戻らない隼人が心配になり、少し様子を見に行くことにする。


「雨脚強くなってきたわね」


 隼人は相変わらず、外をじっと眺めていた。


「雨は好き?」


 そう問われるも、隼人はただ首を横に振るだけだった。


「隼人君、覚えてる?

 あの日もこんな雨の日だった」


 相沢がそう話し始めるのに、隼人は静かに耳を傾けた。


「私が傘を忘れて雨宿りしてたら、男に強引に誘われそうになったの。

 そこに隼人君が現れて、助けてくれたの

 それで、隼人君どうしたかって言うと

 自分の手に持つ傘を置いて、どこかに行っちゃった

 私を置いて行っちゃったのよ、自分はずぶぬれになって」


 その話を聞いて、隼人は考え込むようにしてた。


「覚えて、ないっか」


「隼人、相沢、飯できたぞ」


 そう奥からカルダの声が聞こえる。


「お腹すいたね、行こう」


 そして、相沢は隼人の手を取ると、カルダたちの元へ向かうのだった。





「雨やまねーな、もう二日になるぞ」


 雨脚は収まらず、あの時からずっと降り続いてるのだった。


「食料も尽きそうだ、それに何より寒い」


 降りしきる雨は空気を冷やし、内部にまで冷気を運んでいた。その風はほんとに冷たく、手足をかじかませた。

 辺りに散らばる枝もすっかり使い果たし、頼みの綱の焚火もその勢いを失いつつあった。


「明日の朝までだな、もし止んでいなければ強行するぞ」





 翌朝、カルダは外に出天候を確かめてみると、幸いにも雨は上がり、青い空が顔を覗かせていた。

 足元はの草には水滴がまだ残り、所々水たまりも見受けられたけど、空気は驚くほど澄んでいた。


「おい、お前ら、雨あがったぞ」


 残り四人もぞろぞろと外に出ると、その美しい光景に目を見張るのだった。

 そしてカルダは、3日間狭い部屋に押し込められ、くたびれたであろう体を大きく伸びをすると、皆を街へといざなう。


「行くぞ、ここにはもう用はない」


 そして、隼人たち一行は再び街への帰路についたのだった――――

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