第44話


 ツタは隼人に対して連撃を繰り返す、隼人はそれをステップでかわし、斧ではじく。


「静寂を破るもの、今すぐここから出て行け」


 ツタの連撃に、隼人はじりじりと追い詰められていく。

 そして、大木についには追い詰められ、先ほどより太いツタが隼人を襲う。


 カチャ


 隼人の脚に何かが当たり、とっさ隼人はそれを蹴り上げ、構える。


「炎!」


 ツタは燃え、その勢いをなくす。


「炎、炎、炎」


 今度は隼人が反撃する番だった。隼人はエレガント?を構え火の玉を連射すると、辺りにまき散らした。

 それはとどまらなかった。ツタの攻撃が止んでも撃ち続け、辺りがすっかり灰になるまで。


 カルダは、ゆっくり体を起こすと、頭をポリポリとかき、こう口にした。


「全部燃やしちまったのか」


「俺にとっては仲間のが大事なんでな」


 カルダは隼人のその言葉に驚愕した。助かったことはありがたかったけど、やり始めたらとことんやりつくす

 そんな隼人の姿に、どこかしら怖さのようなものまで感じられた。


 隼人と、カルダは、地に伏した仲間たちを手を引き起こしていく。


「やれやれ

 さて、法陣とやらはどこにあるんだ」


「その下、聞こえた」


 すっかり元に戻った隼人は、途切れ途切れに答える。

 やれやれ、という風にカルダは隼人の指さす先を見ると、先の大木に向かっていた。


 五人は大木をぐるりと回り、入口を見つけると、その内部へと侵入していく。

 そこには確かに、光輝く法陣が描かれていた。


 相沢は戸惑いながらも、エレガント?を構え、その言葉を口にしてみる。


「木」


 するとエレガント?の先端から、緑の球が放出され、それが地に着くと、地面からツタのようなものが伸びるのだった。

 それを法陣の中心に発射してはみたものの、何かが変化する様子はなかった。


「ダメだわ」


 肩をすくめ、辺りを見渡すと、カルダがその法陣をじっと見つめ、言葉を発する。


「そこ。法陣が欠けてる」


 カルダが指さす先に目を向けると確かに欠けていた。全体的に光は弱かったものの、その部分はすっかり光を失い消えていた。


「手遅れ、か」


「書き足したら何とかならないかしら」


「例えそうだとしても、法陣の形なんて覚えてねぇ」


 相沢とカルダは困り果てた。もうここまでだと、そして法陣に背を向けると、ミーナがなぜかそわそわとしていた。


「ミーナちゃんどうしたの?」


 ミーナは、おずおずと移動し、小枝を拾うと――――

 そこに法陣を描き出すのだった。


 相沢と、カルダは目を見張った。その形が正しいのかはわからなかったけど、それは完璧なまでの法陣の形を現していた。


「相沢、ダメ元でもう一度」


 カルダのその言葉に、相沢はもう一度、エレガント?を構える。


「木」


 緑の球が発射され、その法陣の中央に到達すると、その法陣は見事光を増し、息を吹き返したのだった。


「わ、やったー」


 相沢は思わずその場で小躍りした。


「ミーナちゃんすごい。どうしてわかったの?」


 だけど、ミーナは黙り込み、答えることはなかった。

 ミーナは持っていたのだ、見たものを瞬時に記憶する能力を。


 それはミーナの生まれついた過酷な環境が生み出した、悲しき能力だった。

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