第43話
「間もなくだ、間もなく完成する」
男は黒いロングコートを翻し、ゆっくりと階段を下る。
「だがおかしい、エレメントの力が弱くなっている」
男は床に描かれた巨大な法陣を眺めて、輝きが弱まっていることを嘆くのだった。
「もっとだ、もっとだ、もっと吸い取れ
この世界など滅んでも構わない
この地の全てを吸いとれ」
「……様、この世界に人間が迷い込んだとの情報が入っております」
「人間か……捨て置け……いや、呪術の完成には生き血が必要
そ奴らをここへ連れてまいれ」
「はっ」
黒いローブをまとったそいつは、頭を下げるとその部屋を後にするのだった。
◇
不揃いな五人一行は、また森へと戻っていた。そこは先ほどより深い緑に覆われ、土が見えないほどに茂っていた。
「こんな深い森があったなんてな」
「俺も来るのは初めてだ」
しばらく進むと開けた場所に一本の大樹があり、その気は本当に大きく、何人も手をつながなければ囲めないほどの大きさだった。
隼人は、その木に触れ、そして額を付けた。
木の表面は冷やりと冷たく、ざらざらとした感触で、触れていると心地よかった。
その場所は風がそよぎ、小鳥がさえずり、驚くほど静かな場所だった。
木の幹に集中すると、中を流れる水の音が聞こえ、生命の活動を感じられる。
葉の隙間からは、光の帯が伸び、地に光の輪を映し出す。
隼人はそのようにしながら、またボヤリと木を眺めるのだった。
目の前の木のみならず、辺りを見回し、緑と茶と闇のコントラストをただ眺めていた。
「木」
「木?」
「ペルソナ」
「カルダ!木に備えろ、囲まれてる」
それは、いつも風景を眺めていた隼人だからこそ気づいたのかもしれない、風景のちょっとした変化に違和感を感じたのだ。
何もないただの森から、ツタのようなものが飛び出し、カルダの腕に巻き付く。
「なんだこいつ」
隼人は、いつものトンファーではなく、斧をイメージし、その形に武器を変化させると、
カルダの腕に巻き付くツタを切り裂く。
それは何本も飛来し、カルダ、相沢、ノーク、ミーナの体をとらえる。
相沢はとっさにエレガント?を構えるも、それは弾き飛ばされ、草の上に転がり落ちるのだった。
焦る隼人、そのツタを一本一本相手に、切りにかかろうとしたとの時だった。
「ぬしら、ここへ何しに来た」
「私たちはただ、エレメントを、キャ」
話す相沢に、さらにツタが巻き付き、言葉を遮る。
「勝手なものだな。我らは痛みも心も持たずただここにあるだけ。
ぬしらは我らを都合の良いときに生かし、都合の良いときに殺す。
生かすも殺すも、ぬしらの都合次第というわけだ」
「何が望みだ」
隼人は、木々の嘆きに切り返す。
「我らは静かに生きたいだけ。我れらの静寂を破るものはすべて外敵」
そう言うと、ツタを再び隼人にけしかける。
隼人は、そのツタを斧ではじき、次の攻撃に備える。
残り四人をとらわれ焦る隼人、そのツタは彼らの体を徐々に締め付け、一刻の猶予もない。
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