第42話


「どうするんだよこれ」


 そう口にするのはノーク、それを受けても、カルダにも、隼人にも策はなかった。

 そして、相沢は思い出したかのように口にする。


「エレガント」


 そう言うと、相沢はエレガント?を取り出し、イメージする。


「炎!」


 その火の玉は見事に山犬に直撃し、そいつは少しひるんだように見えた。

 そして、相沢は休む間もなく何発も打ち込む。すると、そいつらは統率を失い、ばらけた様子を見せ始める。


「隼人、残りをやるぞ」


 カルダはそう言うと、木から飛び降り、隼人もそれに続いた。


 カルダはとびかかる山犬の腹にダガーを滑らせ、そのまま、返す手で腹部に突き刺す。

 隼人は、警戒し、左回りに詰める山犬に対し、左に持つトンファーを振り威嚇する。

 そして、牙をむき出し、襲い掛かってくるそいつにトンファーをかませ、左のトンファーで腹部にアッパーをお見舞いする。


 相沢は相変わらず、木の上から火の玉を放出し、山犬たちに追撃を加える。


 カルダがダガーを振るも、山犬たちはすっかりひるみ、後ろに飛びのくだけで攻撃の意思はないようだった。

 そうしているうちに、やがて山犬たちは、隼人たちに尻尾を向け立ち去っていくのだった。


 辺りはまだ薄暗く、山犬たちが立ち去っていくのを追うように、太陽が姿を見せる。

 ノークとミーナはまだあくびをし、眠そうにしていたので、彼らは木の上でもうしばらく休むことにした。





 朝日が昇り始めたころ、彼らは再び出立するのだった。進んでいくうち、草木がだんだんと数を減らし岩肌が目立つようになってくる。

 そして、やがて視界は開け、崖が姿を現すのだった。


 崖は切りたち、下を覗けばはるか下まで続いていて、とても下りられるものじゃない。

 そして、唯一の手段として、吊り橋がかけられていたけど、それはもろく、今にも落ちそうだった。


 それは太いロープのようなもので作られ、足場には板が敷かれていたものの、所々歯抜けになっていた。


「行くぞ」


 カルダのその言葉に対し、相沢は大きく首を振る。


「無理無理無理無理」


 相沢はお腹を抱え、体をブルブルと震わせていた。


「相沢さん」


 隼人はそう言うと相沢の手を引き歩き出すのだった。

 相沢は、震えながらも手を引かれたことで、少し心がほっこりし渋々ついてくるのだった。


 カルダが先頭を行き、そのあとに相沢の手を引く隼人、そのあとにミーナの手を引くノークが続く。


 そうして、吊り橋の中腹付近に来たときだろうか、空から音程の高い鳴き声が聞こえ、辺りがその陰に包まれる。


「鳥?……でかい。急げ!」


 カルダは声を発すると走り出し、隼人とノークも続く。強く板を蹴ったため、板が外れるけど、それも気にせず。

 ミーナが渡り切ったところで、そいつは飛来し、爪を立てて突進してくる。


 カルダは急ぎ振り向き、ダガーでその爪を弾き飛ばす。そいつはややひるむも、攻撃をやめない。

 再び、左のダガーを突き出し、爪をかわす。


 そして隙のできた中心部分に、下からか垂直にダガーを振り上げ、切り上げる。


「隼人、持ち上げるから上から打撃を加えるんだ」


 カルダの体の前で組む手を足場に、隼人は飛び上がり、体を回転させて、足蹴を加える。

 隼人が着地したところで、カルダが飛び込み、腹部に強烈な一撃をお見舞いする。


 その鳥は、腹部から血を流し、そしてフラフラと立ち去っていくのだった。

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