第42話
「どうするんだよこれ」
そう口にするのはノーク、それを受けても、カルダにも、隼人にも策はなかった。
そして、相沢は思い出したかのように口にする。
「エレガント」
そう言うと、相沢はエレガント?を取り出し、イメージする。
「炎!」
その火の玉は見事に山犬に直撃し、そいつは少しひるんだように見えた。
そして、相沢は休む間もなく何発も打ち込む。すると、そいつらは統率を失い、ばらけた様子を見せ始める。
「隼人、残りをやるぞ」
カルダはそう言うと、木から飛び降り、隼人もそれに続いた。
カルダはとびかかる山犬の腹にダガーを滑らせ、そのまま、返す手で腹部に突き刺す。
隼人は、警戒し、左回りに詰める山犬に対し、左に持つトンファーを振り威嚇する。
そして、牙をむき出し、襲い掛かってくるそいつにトンファーをかませ、左のトンファーで腹部にアッパーをお見舞いする。
相沢は相変わらず、木の上から火の玉を放出し、山犬たちに追撃を加える。
カルダがダガーを振るも、山犬たちはすっかりひるみ、後ろに飛びのくだけで攻撃の意思はないようだった。
そうしているうちに、やがて山犬たちは、隼人たちに尻尾を向け立ち去っていくのだった。
辺りはまだ薄暗く、山犬たちが立ち去っていくのを追うように、太陽が姿を見せる。
ノークとミーナはまだあくびをし、眠そうにしていたので、彼らは木の上でもうしばらく休むことにした。
◇
朝日が昇り始めたころ、彼らは再び出立するのだった。進んでいくうち、草木がだんだんと数を減らし岩肌が目立つようになってくる。
そして、やがて視界は開け、崖が姿を現すのだった。
崖は切りたち、下を覗けばはるか下まで続いていて、とても下りられるものじゃない。
そして、唯一の手段として、吊り橋がかけられていたけど、それはもろく、今にも落ちそうだった。
それは太いロープのようなもので作られ、足場には板が敷かれていたものの、所々歯抜けになっていた。
「行くぞ」
カルダのその言葉に対し、相沢は大きく首を振る。
「無理無理無理無理」
相沢はお腹を抱え、体をブルブルと震わせていた。
「相沢さん」
隼人はそう言うと相沢の手を引き歩き出すのだった。
相沢は、震えながらも手を引かれたことで、少し心がほっこりし渋々ついてくるのだった。
カルダが先頭を行き、そのあとに相沢の手を引く隼人、そのあとにミーナの手を引くノークが続く。
そうして、吊り橋の中腹付近に来たときだろうか、空から音程の高い鳴き声が聞こえ、辺りがその陰に包まれる。
「鳥?……でかい。急げ!」
カルダは声を発すると走り出し、隼人とノークも続く。強く板を蹴ったため、板が外れるけど、それも気にせず。
ミーナが渡り切ったところで、そいつは飛来し、爪を立てて突進してくる。
カルダは急ぎ振り向き、ダガーでその爪を弾き飛ばす。そいつはややひるむも、攻撃をやめない。
再び、左のダガーを突き出し、爪をかわす。
そして隙のできた中心部分に、下からか垂直にダガーを振り上げ、切り上げる。
「隼人、持ち上げるから上から打撃を加えるんだ」
カルダの体の前で組む手を足場に、隼人は飛び上がり、体を回転させて、足蹴を加える。
隼人が着地したところで、カルダが飛び込み、腹部に強烈な一撃をお見舞いする。
その鳥は、腹部から血を流し、そしてフラフラと立ち去っていくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます