第41話
相沢がキャンプへと戻ると、隼人とカルダとノークはすでに裸で、川で汗を流したらしかった。
そんな姿を見て、デリカシーがないと思えるのと同時に、うらやましいと思えるのだった。
隼人は、相変わらずボヤリと炎を眺めていた。そしてふと、以前野宿した時のことが思い出される。
ほんの少しの間ではあったけど、炎は形を変えていた。それはもしかしたらエレメントの影響があったのかもしれない。
隼人はそうおぼろげに考えるのだった。
隼人は、そんな風にじっと何かを見つめることが好きでもあり、癖ともなっていた。
そんな風に、茫然としている隼人に、カルダがスープのようなものを勧める。
「うまいぞ、食え」
いつの間にか焚火の上で暖められていたそれそすくうと、隼人に手渡すのだった。そのスープは湯気を上げ温かそうだった。
そして隼人は、それをスプーンですくうと口へと運ぶ。
「どうだ?うまいだろ。外で食う飯は格別だ」
隼人はその言葉にコクリと頷いたのだけど、それは恐らくカルダに言われたからそうしたのだと思う。
カルダはというと、そんな隼人の姿を見て、何かしらのもどかしさを感じたのか、隼人の首を腕で引っ掛けこう発する。
「うまいならうまいと言え。いいかうまいって言うんだ」
カルダに促され、隼人は口の中で、小さくうまいと発する。
「だめだ、聞こえない、もう一回」
「おい、しい」
「もう一回だ」
「美味しい」
隼人はそう発したとたん、その目からはなぜか、涙がこぼれた。それがなぜなのか隼人自身にもわかっていなかった。
それは、今まで眠っていた隼人の中心部分、カクの部分に触れからなのだと、後になってから知ることになる。
相沢はそんな姿を、微笑ましくもうらやましそうに見ていた。
ノークはというと一口一口をほんとにおいしそうに食べる。大口を開けてパクっと頬張り。ミーナは相変わらずおとなしいものだった。
五人はひとしきり、食事を終えると、思い思いに横になり、眠りにつくのだった。
◇
ガルルルルルル
そいつらは、目を光らせ着々と隼人たちのもとに近づいていた。
カルダはその気配を察し、むくりと体を起こす、そして隼人もまた、それはカルダが起きたためか定かではないけど目を冷ますのだった。
カルダは他の三人を起こしにかかる。
それは、草の擦れる音を立て、土を踏みしめる音を立て、近づいていた。
カルダはダガーを構え、隼人は詠唱し、トンファーを構えた。
次第に、その音は大きくなり、怪しく光る眼が姿を現す。
「……ダメだ、数が多い。この場を離れるぞ」
カルダはミーナを担ぎ走り出し、他四人もそれに続いた。
そして、そいつらもザザザと音を立て、彼らの後を追う。
相沢の胸は高鳴り、冷や汗が流れる。
「高台へ」
「無理よ」
「木だ、木に登れ」
五人は走り抜け上りやすそうな手ごろな木を見つけると、それにしがみつき急いで登る。
そいつらも勢いに任せて登ろうとするけど、途中まで登ったところで、滑りずるずると下へと落ちていった。
木の上から見ると、無数の光る眼がうろうろとして、すっかり囲まれていた。
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