第39話


 宿を探すため、五人は街の中をしばらく歩き回ることにした。

 カルダが言うには、明るい建物を探せばいいとのこと。


 また単独行動では、はぐれた時に収集がつかなくなるため、少し効率が悪いけどみんなで行動することに。


 そして五人は坂の上からおよその見当をつけて歩き出すのだった。


 街の街灯は少なく、照らされてない場所はほんとに暗かった。


「またあの飯食いてーな」


 ノークはおそらく、前の街で食べた料理のことを思い出していた。


「あんな店そうそうあるもんじゃない

 野宿じゃないだけ満足するんだな」


 カルダはそう言うと少し考えこみ、こう続ける。


「明日からはおそらくしばらくは野宿だ

 今日はゆっくり休むといい」


「っ」


 それは突如起こった、ほんとに突然のことだった。

 カルダは相沢を突き飛ばし、軽い傷を負いその場に倒れこむのだった。


 そいつは細い路地から突然現れ、ボロボロの服に、かぎ爪のようなものを持っていた。

 その男は、もう一度かぎ爪を振り上げると、カルダに襲い掛かる。


 カルダは、仕入れたばかりのダガーを素早く取り出すと、右のダガーでかぎ爪を防ぎ、

 左のダガーで、相手のわき腹目掛けて振りぬく。


 だがそいつは、片手でカルダの攻撃を受け止め、致命傷とはならない。


 危機を察した隼人は、詠唱し、頭部へトンファーを振りぬくも、振り上げられたかぎ爪にはじかれる。


「なんだこいつ」


 そいつはかぎ爪を振り回し、隙を与えなかった。

 カルダと、隼人は一歩また一歩と下がり、隙を伺う。

 その時だった。


「隼人君、カルダさん下がって」


 エレガント?を構えた相沢がその男に狙いを定める。


「炎!」


 相沢がそう発すると、火の玉が筒から放出され、その男目掛けて飛んでいく。


 その男はかぎ爪でその火の玉をはじくと、わずかな隙が生まれる。


 腕を広げた男に大して、カルダは、垂直にダガーを走らせ、よろめいたところに、隼人がみぞおちに一撃を入れる。


 かぎ爪の男は、前屈する格好となり、膝まづくもまだ倒れる様子はない。


 すかさず隼人は、その男の後頭部に高速で回転させたトンファーの一撃をお見舞いする。


 ゴギッと鈍い音、おそらくは頭蓋骨が砕けた音だろう。

 そして、グルコはようやくその地に伏すのだった。


「なんて野郎だ

 こいつもエレメントのバランスによるものなのか

 こんな奴らがうじゃうじゃ出てきたら、相手にできんぞ」


 五人はその男の亡骸を見て、身震いをするのだった。

 そいつは死してさらに強い異臭を放つ。


 それは鼻をふさがないと耐えきれないほどだった。


 皆が離れたのち、隼人は一人残り、手を合わせると、同じくその場を後にするのだった。


 隼人は殺してしまったことに後悔していた。

 それに気づいたのはカルダだった。


「やらなければやられていた

 隼人、敵に情を持つな

 情を持てば明日死ぬのはお前だぞ」


「自分を殺そうとした相手まで許す。

 それが隼人君なのよ」


「それが甘いってんだ」





 許すことは簡単なようで難しいこと。

 果たして何人ができるだろうか。

 そんなことより、ようやくエレメントの存在に気づいたようだな。

 まだ先は長い、気を引き締めていくのだな。

 気づいたところでそれを実行することはたやすいことではないがな。


 ~ 第四章 Fin. ~

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