第34話
「ミーナ、父ちゃんと、母ちゃんは?」
興味深そうに、ノークはミーナにそう尋ねのに対して、ミーナはただ首を横に振るだけだった。
「じゃ、友達は?」
やはり、ミーナは首を横に振る。
「ノーク君、ミーナちゃんをいじめちゃだめよ」
「ちがわい」
ノークは、友達に関しては立場は違えど、自分と同じかもしれない、とそう感じるのだった。
そんなみんなの姿を見て、隼人に少しずつ心境の変化が出始める。
自分はまだ幸せなほうだと、ノークや、カルダや、ミーナのほうがよほど苦労しているように見えた。
そして、隼人は自分の心に問いかける、自分を表に出そうと。
ドクン――――
その時、自分を表に出そうとした隼人に、なんとも言われない感覚が走るのだった。
ノークはすっかりミーナが気に入り、ミーナの手を引いて歩くのだった。
それには、深い意味はなく、ノークはミーナのお兄ちゃんになりたかったのかもしれない。
相沢はそんな二人の姿を見て微笑ましく思うのだった。
森を抜けると、視界が開け、青空が目に飛び込んでくる。
そして、その下には町が広がっていた。
一番にはしゃいだのはカルダだった。
「街だ!飯だ、風呂だ、ひゃっはー」
「やっと着いたわね」
不揃いな五人は、慎重に崖を折り、街へと急いだ。
◇
男は写真を見て、ニヤニヤとしていた。
一日中ずっと眺めてても飽きないほどに。
その部屋は散らかり、物が散乱し、とても生活感が感じられるものではなかった。
だけど、男は満足していた、今の生活に。
加えるなら、その部屋の匂いは酷かった、配達の人が一度なり入った際に
慌てて外に出るほどだった。
彼の名前はグルコ。
一人で生活していて、他に家族はなかった。
元々家族はあったのだけど、彼のその生活についてゆかれず、見放されたのだった。
彼は、コップに水を一杯汲むと一気に飲み干し、雑に流し台に放り投げると、
また奥の部屋へと消えていく。
部屋には、彼のコレクションルームと、写真の現像室があった。
現像室には、彼の収めた写真が所狭しとぶら下げられ、列をなしていた。
それは、とどまることを知らず、壁にも貼られているほどだった。
彼は、その部屋も好きだった。
その写真達を見ては笑みを浮かべる。
その一枚一枚がどれも彼のお気に入りだった。
だけど、それだけの量があっても、彼が満足しているわけではなかった、
彼は、物足りなさを感じる度、外へと出かけ、そのコレクションを増やしていくのだった。
食事することも忘れ、寝ることも忘れ、彼はコレクションに没頭した。
あるいはもはやその感覚はマヒしていたのかもしれない。
彼は、食事をとらなくても、睡眠をとらなくてもある程度平気だった。
空腹感や、眠気が襲ってこないのだ。
彼は、栄養を取るために食事し、生きるために睡眠をとる。
彼にとって、食事と睡眠はその程度の意味しか持っていなかった。
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