第33話
広大な草原を抜けると、そこには森のようなものが続いており、
日はすでに傾きかけていた。
「野宿、しかない、か
街にはたどりつけそうにない」
「少し奥に入って休むぞ
草原では獣に見つかる可能性がある
まぁ火を焚けばよほど大丈夫だと思うが」
カルダはそう言うと先立ってずんずんと歩いていく。
相沢はそんなカルダの姿を見て、心強く仲間にしてよかったと思えるのだった。
カルダは適当な場所を見つけると、枯れ枝と枯草とを集め、
少し大きめの枝を拾うようにと、ノークと隼人に告げるのだった。
そして、カルダは集めた枯れ枝と枯草に火打石で器用に火をつけ、
ノークと隼人の集めた枝で、焚火を組み立てるのだった。
「手慣れたものね」
口を開くのは相沢。
「こうでもしないと生きられなかった」
その言葉に相沢は閉口してしまう。
カルダの事情はまだ詳しくは知らないのだけど、カルダもやはり苦労したのだと、そう思えるのだった。
隼人はボヤリと焚火の炎を眺めていた、すると炎がゆれ、薄くなったり縦に伸びたように感じ、
再び炎を見ると、また元の姿に戻っているのだった。
何のこともない、ただの風のいたずらか気のせいだと、隼人はその時は思ったのだった。
そして、五人は思い思いにその場に寝ころび、その夜を過ごすのだった。
木の隙間から見える月は怪しく光り、これからの行く末を案じているようでもあった。
◇
目が覚めると、彼らは身支度を整え、また西の方へと向かっていくのだった。
方角は、カルダが太陽や星の方向を見ておよそ見当をつけてくれているようだった。
そしてしばらく進むと、辺りからガサガサと音がし、数人の人間が、森の中から飛び出してくる。
「お前ら、おとなしく持っているものをすべて出せ」
古布のようなものを身にまとい、ナイフを手にするその男は、どすを聞かせて、五人に立ちはだかる。
「盗賊、か」
カルダのその言葉を受けて、相沢は、あなたもねとよほど言いたかったけど、あえて黙っていた。
「隼人、相手は盗賊、遠慮することはない」
すっかりリーダー気取りのカルダに、相沢は、あなた新参ねと言いたかったけれど、あえて黙っていた。
隼人は詠唱すると、相手の横面目掛けて一撃、振り向きざまに、腹部に蹴りを入れると
そのまま体をひねり、もう一人に、回し蹴りをお見舞いする。
木を飛び移り、覆いかぶさるように隼人にお襲いかかる、盗賊に対し、拳を高く振り上げ、鼻骨にお見舞いするのだった。
相沢は、カルダを押しのけると、
「隼人君、素敵!」
と言って褒めたたえるのだった。
その時のカルダの悔しそうな顔は、ずっと後になっても引きずるのだった。
また、その時の隼人は、トンファーは装備せず、拳で戦っていた。
それを見て、カルダは、こいつらに情はいらないというのだけど、それに対して隼人は首を振って答えるのだった。
カルダはというと、抜け目なく、盗賊から、金品を奪うとその場を後にするのだった。
相沢はあきれたけれど、それで助けられていることもあって、あえて黙っているのだった――――
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