第四章

第32話


「呪術を求めていたという男を追うのか?」


 カルダは皆に向かってそう尋ねるのを受け、相沢が口を開く。


「そうね、何か手掛かりがあるかもしれない」


「それはいいんだが、ミーナはどうする

 おそらくはこの街の出身だ」


「そうね……」


「ミーナ、一緒に行くよな」


 嬉しそうに、無邪気に話すのはやはりノーク。

 そんなノークを見て、悩みが少ないことはうらやましいと思えてしまうのだった。


「さて、どうするか」


 そう言い、カルダは考え込む。


「ミーナちゃん、お父さんとお母さんは」


 ミーナはその問いに対して、首を振るのだった、そうただ首を振った。


「孤児、か

 あの状況……」


 カルダが、何かを言いかけたのに対し、相沢は首を傾げ、続きを催促したのだけど、

 カルダの口からそれ以上の言葉が発せられることはなかった。


「行こう、ここにたむろしてても仕方ない」


「ミーナちゃんは?」


「連れていく」


 相沢には、カルダの真意は読めなかった、だけど、弱り切ったミーナをここに置いていくわけにもいかなかった。


 そしていつの間にか五人となったメンバーは、街を抜け、西へと向かうのだった。





 街を抜けると、見渡す限りの草原が広がっており、そこに道が張り付くように続いていた。

 草原へと出ると、風が吹き抜け、彼らの衣服や髪を揺らす。


 それは街から吹き抜ける追い風だった。

 その風は、草原の草葉を揺らし吹き抜けると上空へと消えてゆく。

 その風を受け、渡り鳥が上昇し、気持ちよさそうに滑空する。


 空はその日も晴天だった、太陽がまぶしく光、形のない雲が緩やかに流れる。


「うっわぁ」


 ノークはそんな光景に見入っているようだった。


「街の外、初めてだ

 こんなに広い大地があれば

 チャンバラがいくらでもできる」


 何を言い出すかと思えば、チャンバラかと、肩を落とす相沢だった。

 確かに風が心地よかった。

 それは、今までのもやもやを晴らし、まるで吹き飛ばしてくれるかのように吹き抜ける。

 隼人も、カルダも同じくその風を感じていた。

 ミーナはというと、その風に少しよろよろとしていたけど、まんざらでもなさそうだった。


 上空から見ると、彼らは小さく、そのおかしな五人組は道を西へ西へと進むのだった。


「西の先には何があるんだろう」


 ノークは興味津々にそう尋ねる。


「街が確か一つあったが、俺も詳しくはない

 そこでいったん休んだほうがいいだろうな」


 そうカルダが答えるのを、ノークは歳のわりに詳しくないんのだなと思うのだった。


「僕は野宿でもいいぞ」


 わくわくして、ノークはさも楽しそうにそう言う。


「獣が出るかもしれないし、盗賊がいないとも限らない

 最悪、そうするしかないがな」


 カルダは、声を低くしてそう答えるのだった。

 あなたがすでに盗賊ですけどねと、相沢はよほど言いたかったけど、あえて黙っているのだった。

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