第四章
第32話
「呪術を求めていたという男を追うのか?」
カルダは皆に向かってそう尋ねるのを受け、相沢が口を開く。
「そうね、何か手掛かりがあるかもしれない」
「それはいいんだが、ミーナはどうする
おそらくはこの街の出身だ」
「そうね……」
「ミーナ、一緒に行くよな」
嬉しそうに、無邪気に話すのはやはりノーク。
そんなノークを見て、悩みが少ないことはうらやましいと思えてしまうのだった。
「さて、どうするか」
そう言い、カルダは考え込む。
「ミーナちゃん、お父さんとお母さんは」
ミーナはその問いに対して、首を振るのだった、そうただ首を振った。
「孤児、か
あの状況……」
カルダが、何かを言いかけたのに対し、相沢は首を傾げ、続きを催促したのだけど、
カルダの口からそれ以上の言葉が発せられることはなかった。
「行こう、ここにたむろしてても仕方ない」
「ミーナちゃんは?」
「連れていく」
相沢には、カルダの真意は読めなかった、だけど、弱り切ったミーナをここに置いていくわけにもいかなかった。
そしていつの間にか五人となったメンバーは、街を抜け、西へと向かうのだった。
◇
街を抜けると、見渡す限りの草原が広がっており、そこに道が張り付くように続いていた。
草原へと出ると、風が吹き抜け、彼らの衣服や髪を揺らす。
それは街から吹き抜ける追い風だった。
その風は、草原の草葉を揺らし吹き抜けると上空へと消えてゆく。
その風を受け、渡り鳥が上昇し、気持ちよさそうに滑空する。
空はその日も晴天だった、太陽がまぶしく光、形のない雲が緩やかに流れる。
「うっわぁ」
ノークはそんな光景に見入っているようだった。
「街の外、初めてだ
こんなに広い大地があれば
チャンバラがいくらでもできる」
何を言い出すかと思えば、チャンバラかと、肩を落とす相沢だった。
確かに風が心地よかった。
それは、今までのもやもやを晴らし、まるで吹き飛ばしてくれるかのように吹き抜ける。
隼人も、カルダも同じくその風を感じていた。
ミーナはというと、その風に少しよろよろとしていたけど、まんざらでもなさそうだった。
上空から見ると、彼らは小さく、そのおかしな五人組は道を西へ西へと進むのだった。
「西の先には何があるんだろう」
ノークは興味津々にそう尋ねる。
「街が確か一つあったが、俺も詳しくはない
そこでいったん休んだほうがいいだろうな」
そうカルダが答えるのを、ノークは歳のわりに詳しくないんのだなと思うのだった。
「僕は野宿でもいいぞ」
わくわくして、ノークはさも楽しそうにそう言う。
「獣が出るかもしれないし、盗賊がいないとも限らない
最悪、そうするしかないがな」
カルダは、声を低くしてそう答えるのだった。
あなたがすでに盗賊ですけどねと、相沢はよほど言いたかったけど、あえて黙っているのだった。
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