第29話
ミーナの両親のようなものはというと、そのお金で豪遊するのだった。
この先のことを考え貯えをするわけでもなく、まるで湯水のごとく消費していく。
そのお金には、心も重みもなかった。その両親のようなものにとっては
ふっと湧いたただの紙切れ、だけど、世間にとっては価値のあるその程度のものだった。
そのお金で、その両親ようなものの心が満たされたかは定かじゃない。
ただ思うままに消費していたのだから。
◇
ミーナは一室に通された。
そこは温かく、赤いカーペットがひかれ、壁には斧のようなもの、その奥には甲冑の飾りのようなものが見える。
「旦那、こいつ何も反応しやせんぜ
何してもだめでさぁ」
「不良品か、金払ったんだ、しばらく様子見しかなさそうだな
それまで監禁しておけ、逃げられても困るしな」
そして、ミーナが連れていかれた先は、その建物の一室だった。
そこには、机もあり、ベッドもあり、何よりも温かかった。
ミーナは少し救われたと感じた、だけど、ミーナの本音はどうしていいかわからないと言っている。
そこにベッドがあるものの、それを使っていいのかすらわからなかったのだ。
だから、崩れこむようにその場に眠るのだった。
ほどなくして、ミーナは小突かれるように起こされるのだった。
「おい、起きろ。
なんでベッドで寝ない
大事な商品が傷んだら事だ
次からはベッドで寝るんだな」
ミーナは商品と呼ばれたことより、ベッドで寝ろという言葉に困惑していた。
ミーナはもう長い間ベッドなどというものを使ったことがなかったからだ。
堅い床か、少し寝苦しいけど、砂袋の上がミーナの寝床だった。
ベッドはもっぱら両親のようなものが使い、ミーナ用のベッドは用意すらされていなかった。
だから、ミーナにとっては、ベッドで寝るということが、分からなかったというと言いすぎかもしれないけれど、
違和感があった。
恐る恐るベッドに近づき、触れてみると、それはとても柔らかく、温かかった。
ミーナの目からはなぜか涙がこぼれた、それがなぜなのか、ミーナ自身にもわかっていなかった。
◇
ミーナが買われてから、一月ほどが経っていた。
「兄貴どうしやす?
あの女一向に口も開かなければ、反応もしやせん」
「処分、だな」
「はい?」
「廃棄処分すると言ったんだ、聞こえなかったのか
明日広場に用意しておけ」
「はっ」
そう言われると、安物の服を着た男はその部屋を後にするのだった。
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