第25話
四人がお風呂から上がると、すでにお食事が用意されており、
それは見たこともないほど豪華なものだった。
エビのフライに、お刺身に、茶わん蒸しに、お吸い物。
はしゃぐノークを、なだめるカルダ。
「これ、どうやって食うんだ?」
「なんだお前、食ったことないのか?
これはだな……」
相沢はそんな姿を見て、二人はまるで親子だなと、そう思えるのだった。
そしてしばらく楽しいお食事会をしていると、女将がそこに顔を出し、談笑に混ざるのだった。
「あなたたちも何かを求めてここにいらしたのかしら?」
困り顔で、黙り込む隼人に相沢が口を開く。
「いえ、私たちはそういうつもりでは」
隼人にはやはりというか、こういった場所は苦手なようだった。
ペルソナを使ってくれればあるいはとも考えたけれど、またあの状態になってしまっても困るとも思えた。
「そうなのね
あなた方が来る少し前だったかしら
人間の方がいらしてね
何でも、呪術を完成させてたいって言ってたかしら」
四人は黙ってその話に聞き入った。
「私たちのほかにも来てた人がいるんですか?」
口を開いたのは相沢だった。
「確か、男性の方だったわ
だけど私にも詳しくは分からないの
ごめんなさいねぇ」
そう言い残して女将はまた仕事へと戻っていくのだった。
人間、呪術、男性……また分からないことが増えたと、そう思える相沢だった。
たまりかねた相沢は、念のため、カルダに尋ねてみることにする。
「カルダさん、呪術ってこちらの世界にはあるの?」
問われた、カルダは、少し眉と口をゆがめる
「さんなんて仰々しい、カルダでいい」
そして、考え込むようにこう続けた。
「呪術、ね
聞いたことはあるが、俺も詳しいことは知らねぇ」
「そう」
相沢は、辺りを見回したけど、詳しい人はここにはいそうになかった。
ノークは相変わらずはしゃぎ、今の話を聞いていたかも定かじゃなかった。
その後も楽しいお食事会は続き、とは言っても、あとはご想像にお任せします。
皆安らかな眠りにつくのだった。
◇
「ごめんなさい、もう許してください」
「うるさい!あんた、自分のしたことが分かってるの?!」
ミーナが叩かれ、叱咤されることはもはやいつものことだった。
ミーナはというと、叩かれる感覚も他へやり、沸き起こる感情ももはや他へやり、
無感無感情となっていた。
その目は視点を失い、口から出る言葉は、ただ、叩かれているという事実に対して
無意識のように出ているものだった。
「あんたの家は今日からここよ
そこでしっかり反省することね」
そして、ミーナが通された場所は
庭に据えられた小さな物置の中だった。
扉を閉められると、照明などもちろんなく、自分の手すら見えない真っ暗闇。
少しでも明かりをと思い、扉に手をかけるも、そこには鍵がかけられており、
開けることすらままならなかった。
ミーナはあるいは騒ぐこともできたかもしれないけど、
彼女はその気力すら失っていた。
そして、ミーナは手探りで手ごろな砂袋を見つけると、そこに横たわり
その日は眠りにつくのだった――――
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