第三章

第23話


「少しやりたいことがある、手伝ってくれないか」


 カルダはそう言うと、川べりを歩いていく、リンゴ箱を持って。

 ノークは文句を言いつつも、食べていいかと言いつつも、手伝ってくれた。


 そして、とある殺風景な場所に着くと、そこに置くのだった。

 ノーク他二名には、それが何を意味するのかさっぱり分からなかった。


「そのうちだ」


「そのうち?」


 相沢がたまりかねて聞き返す。

 隼人も歯切れが悪いけど、このときのカルダも似たようなものだと思う相沢だった。


 四人はその場に座り込みその時を待った。

 もとい、ノークはというと、リンゴを一個くすねて、食べながら、草を蹴りつけたり、

 虫を追いかけて遊んでいた。


「今日は遅いな

 お前ら少し離れててくれないか」


 訳も分からず、素直にカルダに従う隼人たち。

 カルダがちょうど見えなるか見えないかのところまで来ると、それは起こったのだった。


 子供たちがあちらこちらからと姿を現し、我先にとリンゴを奪い合う。

 カルダがなだめるも、それも聞かずに、だけど喧嘩するようなことはなく

 両手にいっぱいにリンゴを持つと、またどこかへと消えていくのだった。


 カルダはすっかり空になったリンゴ箱を担いでこちらへ戻ってくる。


「あいつらみんな孤児だ」


 相沢の心は少し暖かくなった、そして、わきを見ると、ノークは泣きじゃくっていた。


「てめ、いいやつじゃねーか」


 ノークは立場は違えど、自分と似たようなところをその子供たちに感じたのかもしれなかった。

 相沢は、ハンカチを取り出すと、ノークの鼻をかませた。


 そして、ノークはカルダに抱き着くのだった。

 すっかり気に入ったようだと、相沢はほっと胸をなでおろした。

 カルダは少し困り顔を見せたけど、まんざらでもないようだった。


「子供好きなのね」


 そう言われてカルダはそっぽを向き、こう答える。


「別に」


 そう言い、頬をコリコリとかくカルダを見て、相沢は男って素直じゃないと思えるのだった。


「ところで、隼人、てめーには俺を生かした責任を取ってもらうぞ」


 豆鉄砲を食らったように目を丸くしきょとんとする隼人。


「てめ、聞いてんのか?」


「隼人君はいつもこうなの

 でもすごくいい人なんだよ」


 すかさずフォローを入れる相沢に、ノークも続く。


「隼人はすげー奴だ、お前が知らないだけだ」


 そう言われるも、カルダには、今の隼人には覇気のようなものが感じられず、思うことがあるとすれば

 自分を倒した時の感じと随分と違うなと思えるのだった。


「まぁいい、少し世話になるぞ

 顔も割れてるかもしれねぇ、動きづらくなっちまったしな」


 ノークと相沢は大きく頷き、これほど心強い味方はいないと思えた。

 隼人はというと、同意することも否定することもなく、ただ川を眺めていた。

 その時何を思っていたかは、隼人のみが知るといったところだろうか。


 やっぱりいけすかねぇ、そう言って、暴れるカルダを、ノークと相沢はなだめるのだった。

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