第22話
裕福な家だ
すべて奪い去れ、ひとつ残らずだ
はっ
提督、子供がいますがいかがいたしますか?
ガキに用はない捨て置け
邪魔な奴らは始末しただろうな
はっ、抜かりなく
目の前には男性と女性が横たわっていた
父さん……母さん……
起きて……起きて……
起きて……起きて……
ガタガタ……ゴトゴト……
……―――
俺は……死んだのか?
起きて……起きろ……
……なんだ……
これは、意識……
俺はまだ生きてる
「やっと起きたか」
うっすらと目を開けるカルダの目に、ノークの顔が飛び込んでくる。
まだ頭がボヤリとしていて、頭が回らない。
「相沢、こいつ目を覚ましたぞ」
「ハンカチ、取り換えるから待って」
ノークが顔を引くと、木造の屋根が目に飛び込み、辺りにはわらが散乱していた。
音は、ノークが騒いでいる以外は静かなもので、木材や土のにおい以外、これといった匂いもなかった。
「よかった、無事だったのね」
「俺は生きてるのか」
カルダは死んだはずだった、少なくとも本人はそう覚悟を決め、ナイフを振るったはず。
それがなぜか、こうしてまだ息をしていた。
それは少し息苦しいくらいではあったけど、気になるものではなかった。
「安心しろ、傷は浅い」
カルダには、力を弱めたつもりはなかった、他を殺すと同じく自分の首も確かに切り裂いたはずだった。
「隼人に感謝するんだな」
カルダは、ゆっくりと体を起こすと、隼人の姿を探した。
すると隼人は、入口付近で、辺りを伺っているようだった。
「なんで助けた」
やはり隼人は振り向かず、ゆっくりと口を動かす。
「命、大事にしないと」
「あ?」
「あ、隼人君少し口下手だから、気にしないでね」
カルダは思った、こんななよなよしたやつに負け、そして命を助けられたと。
生きていること自体はありがたかったけど、これほどの屈辱はないと。
「ここは?」
「街外れの納屋の中だ、お前を運んでくるの大変だったんだぞ
最も僕は衛兵を巻いただけで、運んだのは隼人だけどな」
得意げにノークはそう話す。
そして、隼人達はこれまでの経緯を話し、カルダもまた、事情を話したのだった。
「カルダ、疑って、ごめん」
隼人は素直にそう思い、途切れ途切れに謝るのだった。
「なんで謝る。
てめーはてめーの行いが信じられねーのか!」
そのあと、カルダが、こいつ気に入らねぇといい、ノークと相沢が必死になだめたことは伏せておこう。
◇
最悪の事態は免れたようだな。
だが、心境は複雑じゃないのか?
様々な意味でな。
引き続き頼むぞ隼人――――。
~ 第二章 Fin. ~
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