3-6『彼女達の騎馬戦』
個人競技は、広い校庭を最大限活用し、いくつかは平行して進行していた。個々の得意分野を生かすため、限界までスケジュールを組んでいるという。よって、しばしば冷蔵庫くんは運営側に戻った。
午前の部の個人競技が一通り終わると、次は校庭を広く利用した二人以上で参加する団体競技だ。俺は大玉転がしと障害物リレーに参加した。
後者の障害物リレーとは、要するにバトンを渡しながら次の人が様々な障害物や課題に挑戦しながら進んでいく変わったリレーなのだが、俺は冷蔵庫くんの采配でパン食いのパートに置かれた。
「流石いつも食い物に飢えてるだけはある。あのパンへの食いつきは凄まじかったな」
俺はパン食いパートにおいて一発で食いつき、追い上げて次にバトンを渡すことが出来た。活躍したはずなのに、周囲の目が少し冷ややかに見えたのは俺だけだろうか。
そして今、女性陣は皆出陣し、冷蔵庫くんも運営側で駆け回る中、俺は犬を両脇に抱えて校庭のど真ん中を見ていた。いよいよ、この広大な校庭を利用した大掛かりな競技が始まるからだ。
『なあ、
「騎馬戦っていう競技だよ。人間が集まって何か組んでるだろ? あれで一番上に乗っかってる人間の帽子を取り合うのさ」
と言っても、ベンにはやはり伝わらない。要は人間が被っているものを奪い合うものだと噛み砕いて言うと、なんとなく理解したようだ。ちなみに実際はそれに加えて騎馬そのものが崩れる、白線から出るなどでも失格となる。
『しかし、なんでわざわざああやって固まるんだ?』
「何か制限があるっていうことも、人間の遊びの一つなんだよ」
と教えてやると、今度のベンはすぐにわかってくれたようだ。
この騎馬戦、この運動会では女性参加の競技として設定されている。昔は男性の部もあったのだが、両チームともあまりにも殺気立ったせいか、骨折者が続出し、近年では外されているらしい。
一方女性の部は、あの
そんな競技に、
騎馬は黒木田さんを前方にし、左方に
恐らく司令塔となる木崎の婆さんは、骨太そうな女性三名に抱えられ、自らが強豪であると示すように腕を組んでいた。あの高齢者とは見えない体力を目の当たりにした身としては、あれがハッタリとは思えない。
『遊びにしては、かなり殺伐として見えるぞ』
「騎馬戦がどんなのだったかあんまり記憶にないけど、こういう大勢の競い合いは盛り上がるものだから」
人間はあくまで動物の一種である、こうして動物とも会話出来るからそう感じるのかもしれないけど、本能的な面だけ見れば人間も大差はないと思っている。ただ人間はそのコントロールが上手いというだけだ。
やがて審判らしき赤と白の旗を持った人達と、スターターがそれぞれの持ち場に付く。頃合いを見て、スターターが掛け声とともにスターターピストルを空に放つ。
それを待ち望んでいたかのように、女性達の地を震わせるような雄叫びが轟いた。
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