序章 クリスマスイブ編 2
「ニンジン、ジャガイモ、タマネギ、カレー粉っと。よし、あと少しだな」
リア充どもがキャッキャウフフしている街中をぼっちで歩くのが、これほど辛いものとは思わなかった。
すぐさまパシリ、もとい任務を遂行してはやく帰ろう。ターゲットはどれもカレーの材料。報酬として夕飯は三杯ほどお代わりさせてもらおう。
「さて、あとはお肉と…………納豆か」
納豆カレー。
あのねばねばや臭いが嫌な人にはオススメしないが、好きな人にはぜひ食べてもらいたい逸品である。
ちなみに、うちは普段からカレーに納豆を入れてるわけではない。
ただ、
「まぁ美味しいけどさ、納豆カレー。でもさすがに食べ飽きてきたなぁ……」
とりあえず納豆はスルーして、精肉店に向かう。すると奥の方から、見慣れた青髪の美少女がこちらにブンブンと手を振りながら走ってきた。
「しーくん、やっほー!!」
この体操服の美少女こそ、幼馴染の露葉である。青みがかったショートヘアに、あどけなさが残る愛らしい顔立ち。最近は、胸周りも成長してきたようで……って、幼馴染みをいやらしい目で見るのはどうかと思った。とにかく、控えめに言って美少女。アニメが好きな僕も絶賛するくらいには、素敵な女の子だ。
……ただ一つ、決定的な弱点がある。
「よっ、露葉。夕飯はカレーみたいだぞ」
「わっ、カレーなんだ! おにくおにく~。それと納豆も忘れずに~!」
何を隠そう、コイツの大好物は納豆である。どんな料理にも、基本納豆がログインする。納豆系美少女……いやいや、誰得だよそれ。なんか臭そうだし、絶対人気でない。
……納豆食べてるとにおいって臭くなるのか、ちょっと気になるところではある。
「で、何でこんなところに? ここ、帰り道でもないだろ」
「うちのお母さんから連絡があってね~、しーくんが商店街でサンタさんやってるーって聞いたから、部活終りにそのまま~って感じだよ…………しーくん、どうしたの?」
「いや、なんでもない」
現在進行形でにおいを嗅いでいた。
汗かいてるとき特有の女の子のいい香りがした。
表記的には臭いじゃなくて匂い。
ちなみに、僕は普段からにおいを嗅いだりはしない。あくまで読者のみなさんが露葉に幻滅しないようにするためである。
ボクヘンタイジャナイヨ。
「残念だったなぁ、露葉。サンタはもう終わって、今は夕飯のためのショッピング中だ」
「うぅ~、ちょっと残念。しーくんサンタさん見たかったなぁ……プレゼントも貰いたかったよ~」
「いや風船は配ってたけど、さすがに中学生相手に渡すのはどうなんだか……というか、俺のサンタ姿の何がいいんだよ」
露葉のサンタコスなら、僕からも読者のみなさんからも需要があるだろうに。
「ほら、カワイイかな~って。しーくん、ちょっと女の子みたいなところあるし…………ね?」
「……なんじゃそりゃ」
少し顔を赤らめているのがきになる。
「見たいものは見たいんだよ~。それでしーくん、お買い物はあと何が残ってるの?」
「ん? あぁ。ここで肉を買っていくから…………後は納豆か」
「なっとう‼ よ~し、しーくんがお肉買ってる間にダッシュで勝ってくるね~!」
陸上部で鍛え上げた脚を出し惜しみなく用いて、全力で駆けて行った。
今日は人が多いからぶつからないように注意してほしいものだ。
勢いあまってリア充どもにビッグバンアタックしてくれるなら大歓迎ではある。
「さーて、ささっと買い物すませちゃうか――すみませーん、牛肉が欲しいんですけどー」
「あいよー、ちょっとまっててくれやー」
そういえば、勝ってくる納豆の量を伝え忘れたな……と、少しばかり嫌な予感がするんだけど。
今から露葉に追いつくのは無理だし、諦めよう。うん(遠目)
さて、僕達の買い物を眺めていても面白くないだろうし、そろそろ自己紹介をする。
僕は
アニメ鑑賞ラノベ読書が好きな、いわゆるオタクである。
中学校がどのクラスだとか、部活がなんだとかは……うん、どうでもいいよね。
一応、この物語の主人公なんだけど……主人公に相応しい何かを持ってるわけじゃないし、僕の周りは至って平和そのものだから、人選ミスだと思うんだ。
……いや、そんなに平和でも無いか。平和な方が珍しいだろう。
露葉も戻って来たことだし、これにて自己紹介終了!
「たっだいま~! なっとう、買って来たよ!」
「おかえり……って、その大きな袋はなんなんだよ!?」
おかしい。納豆を買いにいったはずなのに、一番大きいサイズの袋をぶら下げてるのは明らかにおかしい。
「お徳用5キロバックだよ~! みんなたっくさん食べるだろうし、大きいの買っちゃった♪」
参考程度に。
通常、納豆1パックあたり約50グラム。つまり100食分。業務用スーパーでも行ったのだろうか。
「そんなに納豆入るか!!……って、別に使い切る訳でもないか」
「うん! 家にはまだ残ってるけど、どうせだから新しいの使いたいな~って」
「なるほどな。ちなみに、どのくらい残ってるんだ?」
「う~ん、これ2袋くらいかな~! 1週間で1袋空けちゃうから、また買いに行かないとだね」
「お、おう…….」
1日って3食だよね? 1週間で100食分が消えてなくなる……いや、これ以上考えるのはよそう。
なんとなくだが、身の危険を感じたのだった。
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