第41話 二回戦開始前

 僕たちの後にも次々と試合が進んでいき、それらを見ていて気が付いたことがあった。

 それは、2年生はそこそこスキルを使う人たちがいるというのと、3年生になると惜しむことなく使っている者がほとんどだったということだ。

 つまり、それらの人はもう信頼できる仲間が出来ており、隠す必要もないと判断しているのだろう。


 そう考えると、僕が隠しているのはもともとがヒュージさんの意向とはいえ、このままでいいのかなと思ってくる。

 彼が言うには、色々なスキルを使っていると、僕がスキルを取得できるということに勘づく者がいるかもしれないというものだ。

 確かに、その言い分はわかるし、僕も他の人に余計な詮索はされたくない。

 でも、本気でこの三人とやっていこうと思うなら、スキルはある程度使用したほうがいいかもしれない。

 まぁ、その辺は今度また相談しよう。

 ただ、こうやって2年と3年が色々スキルを使ってくれるのは、正直ありがたい。

 集中して見ているとなかなか使えそうなスキルもあり、それらを模倣して僕のものにできるかもしれないから。


 そのあとも観戦を続けていると、第一闘技台で戦っていた7と8の試合が終わった。

 第二闘技台の試合はシードもあったし、すでに全部終わっていたので、これで一回戦の全ての試合が終わったことになる。


「よーし。次の試合を始めるぞ! 1年Sクラスと3年Aクラスは第一闘技台に上がってこい! 2年Sクラスと2年Bクラスは第二闘技台だ!」


 グラント先生の言葉にしたがって僕たちは移動を始める。

 あのとき看板で見たトーナメント表は確か……

 1番『1年Sクラス』 VS 2番『2年Cクラス』

 3番『3年Aクラス』 VS 4番『1年Dクラス』

 5番『1年Cクラス』 VS 6番『2年Dクラス』

 7番『3年Dクラス』 VS 8番『2年Aクラス』

 9番『2年Sクラス』 VS 10番『3年Cクラス』

 11番『2年Bクラス』 VS 12番『1年Aクラス』

 13番『1年Bクラス』 VS 14番『3年Bクラス』

 15番『3年Sクラス』 シード


 今残っているのを整理すると、


 1番『1年Sクラス』 VS 3番『3年Aクラス』

 6番『2年Dクラス』 VS 8番『2年Aクラス』

 9番『2年Sクラス』 VS 11番『2年Bクラス』

 14番『3年Bクラス』 VS 15番『3年Sクラス』


 という感じだな。


「3年Aクラスか。さっき試合を見ていたけど強かったね」


「ああ、そうだな」


「そうね。でも、私の敵じゃないわよ!」


「なんとか頑張りましょう?」


 僕の言葉に反応してくれた三人は、気合いを入れるためなのか拳を握りしめている。

 さっきと同じように僕が二人相手をしてもいいんだけど、ゼベクトが相手をするのかな?

 そう考えた僕は、彼に声をかける。


「ゼベクト、二人相手にするかい? どうする?」


 その言葉に彼は困ったような顔をして口を開く。


「うーん、ここは止めておくわ。まだまだ俺の本気をだすところじゃないと思うし」


「あんたのそれはいつ出るのよ……そもそも、本当にあるの?」


 ゼベクトの言葉に疑問を抱いたようで、キャサリンが問いかけた。


「あるっての! これはマジのマジ! ただなぁ、そのためにはアレを使わないとダメだし。まだ隠していたいんだ。わかるだろ? きっとお前らも同じように何か奥の手となるものを持っているんだろう?」


「そうやって言われると弱いわね。確かにそうよ。うーん、奥の手を使わないとどこかで躓くかしら。さっき見た試合で3年Aクラスは相当強かったもんね。あのパーティーはスキルも沢山使っていたし」


「まぁ、お前たちが卒業後もパーティーを組んでくれるっていうなら、俺は本気をだすのもやぶさかでない」


 彼は真剣な顔をして、僕たちにそう問いかけてきた。

 その内容は奇しくも僕がさっき考えていたことでもある。

 でも、これは1年生の今時期に結論を出すべきでもないような気がするのも確かだ。

 ここはどう答えるべきなのかと思案に暮れた僕は、視線をフローラとキャサリンに向ける。

 すると、二人はどこか気まずそうな表情で口を開く。


「うーん、卒業後もパーティーを組みたい気持ちはあるんだけどね……ただ、ね……やっぱりそれを決めるにはまだ早いと思うの。それに――ううん、これは言えないわね」


 キャサリンは何かを言いかけて止めてしまう。

 彼女が何を言いかけたのか気になった僕は、その内容を想像してみるがまったく思い浮かばない。

 そんな風に考え込んでいると、次はフローラが口を開いた。


「私も組みたい気持ちはあるんだけど……今はまだなんとも言えないわ。ごめんね?」


「いいって、いいって。気にすんなよ! 俺もまだ今時期に話すことじゃないと思いつつ言ったんだし! まぁ、それはそれとして、試合を頑張ろうぜ!」


 二人の言葉を受けて、ゼベクトは笑顔を浮かべながらそう言った。


「おーい! もういいかー? お前らが1年だから少し大目に見ているが、次からはもっと早く用意を終えておけよ?」


「「「「すみませんでした!」」」」


 四人の謝罪の言葉が一つに重なった。

 なんか僕たちのパーティーって謝るときだけは、どこのパーティーにも負けない連携を発揮してる気がする。

 そんなことを考えつつ、僕は武器を構えてから、相手を観察を始める。

 相手は男の子が二人に、女の子も二人だ。さらに観察を進めようとしたところで――


「おい! そんなに観察されると照れるぜ!」


――と対戦相手から声が掛かった。


「おう! お前らはSクラスとはいえ、まだ1年だし、お前らに胸を貸すつもりで戦ってやるぜ! ついでだから自己紹介をしてやる! 俺はブリューだ」


 彼を見ると、手には槍を持っている。体格は結構いい。

 続けて、もう一人の男の子が口を開く。


「僕はヘイルだ。武器はこの大剣を使っているぜ!」


 彼さんはそう言って、僕と同じく大剣を振りかざした。


「私はポリアンヌよ。武器は杖ね」


「私はノワールよぉ」


 ポリアンヌさんの次に最後の一人がそう言った。

 ノワールさんは名乗りと同時に、大きなハンマーを頭上に掲げてから振り回した。

 あれで殴られたら相当痛いだろう。ハンマーの先端部分は、見た感じ1メートルほどはあり、彼女はそれを軽々と振り回している。


「一回戦を見ていたぜ? 俺たち相手にもお前が……お前の名前はなんていう?」


 ブリューさんが僕を指差して聞いてきたので答える。


「僕はアランっていいます」


 一応年上だから敬語を使わないとね! あ、さっき一回戦のときは使ってなかった。まだまだ意識しないと敬語を使えないのはまずいよね。先生になら普段から敬語になってるんだけど。

 ゼリオンたちは論外で、あいつらには使う必要はない。


「ふーん、アランね。それで、お前は俺たちに対しても、二人同時に相手をするのか?」


「あー、それ興味あるぅ」


 ハンマーを振り回すのを止めずに、ノワールさんがそう言ってきた。


「それでー? もし、二人同時に相手をするとしたら、誰と誰なの?」


 そう言われて僕は考えた。

 この中から二人選ぶとしたら……杖を持っていて、いかにも魔法を使いそうなポリアンヌさんは確定として、あと一人か。


「僕はポリアンヌさんと……そうですね、ブリューさんを相手にします」


 彼はその手に槍を持っている。ということはアクティブスキルを良く見て取得するチャンスがあるかもしれない。

 槍についてはまだ<五連突き>しか覚えていないし。

 まぁ、それとは別にブリューさんがこの中で一番強そうな雰囲気をしているからというのもある。


「ふーん。俺を相手にねぇ」


 彼はそう言って、にやりと笑った。

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