第15話 スキルの種類
ヒュージさんは落とした剣をすでに壁に立てかけていた。
あのまま床にあったら危なかったからなー。
「ヒュージさん、何?」
「ああ、実はな? 前に俺のスキルの数を聞かれた時に、最初は三つと言ってから二つと言い直したよな。覚えてるか?」
うんうん。ヒュージさんは自分のスキルの数を覚えていない、おっちょこちょい者なんだなーって思ったからちゃんと覚えてるね。
でも、この人にはお世話になってるから、おっちょこちょい者だよね! なんて言わないよ!
「覚えてるよ」
「あれは、使えるスキルの数ってことで二つって言ったんだ。正確に言うと、所持していると言えばいいのか? 覚えていると言えばいいのかわからないが、とにかく俺のギフトには三つのスキルがついてきたんだ。そして、その三つ目のスキルはスキルとして使えるものではなくて、デメリットがあり使用ができないスキルなんだ。この辺もついでだから、今教えてやるか」
スキルは全部が全部いいものじゃないってことなのかな?
「うん。教えてくれるかな」
「ああ。スキルは大雑把に分けると、使用できるアクティブスキルと、所持しているだけで力を発揮するパッシブスキルに分けられるんだ。これはギフトカードにも表示される。<ウェポンブレイク>にはアクティブスキルって載ってなかったか?」
へぇ、アクティブスキルっていうのとパッシブスキルっていうのがあるんだね。
アクティブスキルをスキルって呼んでいるんじゃなくて、両方合わせてスキルっていうってことなんだな。
聞こうと思ってた謎が解けちゃった! 謎が解けてちょっと嬉しかったけど、今はヒュージさんに質問されていたことを思いだしたので慌てて返答をする。
「の、載ってたよー」
「だろうな。そして、パッシブスキルの中には厄介なスキルがあってな? まぁ、アクティブスキルの中にも厄介なのはあるって聞くが、それは使わなきゃいいだけの話だからな。アクティブスキルってのは使用できるスキルだ。それに対して、パッシブスキルってのは常時勝手に発動してしまうスキルだ」
「勝手に発動すると、何かダメなの?」
「ああ、いい効果のならいいんだが、スキルは一概にそうは言えない。俺のパッシブスキルは<使用魔法効果半減>ってスキルだ。その効果は……俺が使う魔法の威力が半分になるんだ」
「えー!」
そんなスキルがあるのか、嫌すぎるなぁ。
「俺が今まで聞いた中で、デメリットしかないパッシブスキルは<身体能力低下>や<水魔法封印>とかがあるな。絵本を読んだなら知ってると思うが、もともとギフトってのは、ヨアトル様が知的生命体に個体差を付けるために贈られたものだ。だから個体差をつけるためにも、同じギフトあろうと同じスキルを所持しているとは限らないし、デメリットがあるスキルもあれば、弱いスキル、強いスキルもあるのさ」
うーん、ヨアトル様っていじわるなのかな? なんて……ヨアトル様ごめんなさいね!
わざわざギフトを贈ってくれてるんだから、そんなことを考えちゃダメだよなー。
僕がそんなことを考えていると、ヒュージさんの話はまだ続くようで口が動く。
「だから俺の使えるスキルは二つって言ったのさ。そして、俺が使えるもう一つのスキルは<三連斬り>ってスキルだ。まぁ、スキルっていっても俺の<三連斬り>はスキルがなくても使うことが可能だ。鍛えに鍛えて、高速かつ正確に剣を振るって三回斬るだけだからな。こういう技系のスキルは、その技を練習しなくても最初から使えるっていう利点と、上達が早くなるって利点がある。そして、スキルの威力や正確性などは自身の身体能力と、位階と、スキルの熟練度や適正上限に左右される。スキルの適正上限は、ギフトの種類によって違う」
うーん、難しいなー……
なんか色々なことが重なって最後に威力が決まるし、どこまでスキルが強くなるのかはギフトで決まっているってことなのかな?
「例えばだ、『剣聖』ってギフトがある。これは相当強いギフトだ。そして俺の剣士は正直そこまで強い! ってわけでもない。仮に『剣聖』のギフトを持っている者が<三連斬り>のスキルを持っているとしたら、俺のそれよりもスキル適正上限が高くなるだろう。まぁ、『剣聖』のギフトなら、スキルの力がなくても<三連斬り>くらいはできると思うがな」
今先ほど聞いた内容を僕がなんとか理解しようとしていると、ヒュージさんが少し具体的に言ってくれた。
「うーん、ならスキルを覚える意味はないの?」
「スキルを覚えるとそれがないよりも発動が楽にできるし、威力も上がるからいいスキルならあった方がいいな。まぁ、スキルにならなくても技系なら役に立つし。それに、ほとんどの人はスキルを後天的に覚えられないからな。あとは……そうだな。アクティブスキルの技系で戦闘系以外だと、物の価値が分かる<物品鑑定>もあるな。これは目利きの経験がなくても、物の価値がわかるというものだ。目利きを学ぼうとしていたらいつかは習得できるかもな。ちなみに人のギフトカードは鑑定できない」
そうなのかー。あれ? そういえばスキルを覚えたら、覚えられるスキルの数に上限があるかないかわかるって言ってたよね?
ここまでその話は出ていないよね? どうだったかな?
うーん、出ていないはずだなぁ。
僕が「うーん、うーん」って唸っていると、ヒュージさんが声をかけてくる。
「アランどうした?」
「あっ、一つスキルを覚えたら、スキルの上限数がわかると思うって言ってたよね?」
「悪い、悪い。その説明をすっかり忘れてたぜ。ギフトカードでスキルを見た時、その横に何か数字がなかったか?」
んー、そんなのはなかったなよなぁ。 でも、見落としてるかもしれないから、念のために確認してみようかな?
まぁ、また見てみたらわかるか。
「『ギフトカード・オープン』」
ギフトカード
名前:アラン
位階:2
ギフト:努力
アクティブスキル:<ウェポンブレイク>
やっぱり数字なんてないよね。それがあるのは位階のところだけだ。
それをそのままヒュージさんに伝えると、ヒュージさんは「やっぱりな」と言ってにやにやとしている。
何がやっぱりなんだろう?
「実はな? 普通はギフトとアクティブスキルの間に、『習得可能スキル数』って表示があるはずなんだ。これは『天才』のギフトを持ってる奴にも聞いたから間違いないし、俺も3/3って表示がある。そうなると、表示がないアランは取得できるスキルの数に上限がないのだと思う。まぁ、その分ちゃんと努力して取得していく必要があるんだけどな。『天才』の奴は……それこそ一日とかからず覚えていたみたいだが」
へー、やっぱり『天才』の人だと覚えるのが早いんだな。いいなー。でも、上限がないならこっちの方がいいのかな?
「とりあえず、今日のところはこの辺にしておくか。あと、これは覚えておけよ? スキルはあくまでも力の一端であり、スキルが全てではない。それより大事なのは身体能力や魔力や魔法の適性値になる。そして、それらの上限は全てギフトで決まる。多分アランにはこの上限もないと予想されるから、とにかく鍛えていくぞ!」
「はい!」
僕がそう返事をすると同時に、ママの声が聞こえてくる。
「はいはーい、難しいお話は終わった? ご飯がもう出来てるから早く食べましょう」
その声を聴いて振り返ってみると、テーブルにはもうご飯が用意されていた。
今日は熊のお肉みたいだなぁ。こんなに匂いがするのに気が付かなかったなんて、ヒュージさんのお話を真面目に聞いていたからかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます