第14話 スキルの練習

 ヒュージさんにスキルを見せてもらってからは、毎日<ウェポンブレイク>の練習をしていた。

 見せてもらったっていっても、見えなかったんだけど……


 それでも、あのあと何回か繰り返し見せてもらったら、徐々に見えるようになってきた。

 最後の方はヒュージさんが疲れ切っていたけどね。


 一日の鍛錬が終わる度にギフトカードを見てるんだけど、なかなかスキルが現れない。

 スキルというのは後天的に増えないのが普通だから、気長にやったほうがいいってヒュージさんが言ってたけど……

 多分、『天才』っていうギフトならもっと早く覚えるんじゃないのかなー? なんとなくだけど、そんな気がする。


◇◇◇


 <ウェポンブレイク>の練習を始めてから、十五日経ったその日の夕方――僕はいつも通りに「『ギフトカード・オープン』」と言う。

 いつになったらスキルが増えるのかなー?


ギフトカード

名前:アラン

位階:2

ギフト:努力

アクティブスキル:<ウェポンブレイク>


 あれ? スキルの項目が増えてる! そして――ウェポンブレイクがある! やったね!!

 ヒュージさんが予想は合ってたんだね! それにしても、スキルの本当の名称はアクティブスキルっていうんだなぁ。

 それを短縮してスキルって言ってるのかな? あとで聞いてみよう。

 そういえば、ヒュージさんは二つのスキルを使えたって言ってたよね。

 あとは何が使えるんだろう? まずは一つ目を覚えてから次に教えてやるって言ってたからなぁ。


 あとは……位階が増えないで止まったままだよね。

 1から2にはなったけど、これはヒュージさんが森に行くときに僕を一緒に連れて行ってくれて、何回か魔物を倒せたからだし、最近は連れていってくれなくなっちゃった。

 それに倒したっていっても、ヒュージさんが凄く弱らせたのを僕が止めを刺しただけなんだけどね。

 でも、あの時は命を奪うってことの覚悟と大切さを教えてもらったなー。

 魔物も生きているけど、そもそもヨアトル様が人間とかを成長させるために魔物を作ったって絵本に書いてたしね。

 それでも……ついさっきまで生きていた魔物が死んでしまうのは、なんとも言えない気持ちになったんだよな。


 あっ、今はそんなことよりもスキルのことをママとヒュージさんに教えないとダメだね!。

 早く二人に教えたいけど、鍛錬が終わったばかりだし、まずは身体を拭かないとダメかな。

 ようやく最近になって自分一人で拭けるようになってきたから、気持ち的に楽だなぁ。まぁ、それもたまにだけだけど。

 ママに拭いてもらうのは嬉しい気持ちもあるけど、くすぐったくて、くすぐったくて困っちゃってたんだよな。

 そうはいってもママは僕を拭きたがるから、ママがご飯を作ってる間にこっそりと拭くのがコツだ!

 でもなー、あんまりそれをやるとママが悲しむから、五日に一回くらいしか自分で拭けないのが困りものだよね。

 そして拭き終わったので、僕は急いでリビングルームへ向かう。

 リビングルームに入ると、ママはご飯支度をしていて、ヒュージさんは武器の手入れをしていた。


「ママー! ヒュージさん!」


「どうしたの?」


「なんだ?」


「うんとねー、僕はスキルを覚えたよ! ギフトカードを表示したら、<ウェポンブレイク>って載ってた!」


 それを聞いたヒュージさんは、手入れしていた武器をゴトンと落とした。

 危ない! もう少しでヒュージさんの足が切れちゃうところだったんじゃないかなー?

 ヒュージさんの顔を見てみると、変な顔をしていた。

 次にママを見てみると、目にうっすらと涙を浮かべている? あれ? 悲しかったのかな?


「ママー! どうして泣いているの? 僕がスキルを覚えたのが悲しかったの?」


 不安になりながらも、僕はママに聞いてみた。

 すると、ママは凄い勢いで首を横に振った。


「アランちゃんは嬉しくて泣いたことがまだないものね。人はね? あまりに嬉しく思った時にも涙が出ちゃうものなのよ?」


 そうなんだー? 僕は痛いときと、悲しいときしか泣いたことがないしなぁ。

 あれ? でも、昔ママに慰めてもらった時に泣いたのは……嬉しくて? それとも悲しかった気持ちを思い出して?

 うーん、わからない。人は嬉しくても泣くって、今知ったからいいかなー。

 ママはそれだけ喜んでくれたってことなんだ……

 それを知って、なんだか僕も凄く嬉しくなってくるし、胸のあたりがぽかぽかしてくる。

 喜んでくれて良かったって思っていると、ママが僕の方に駆け寄って来て抱きついてきた。

 そして、ママにおっぱい攻撃を受けている時に、後ろからヒュージさんの声が聞こえくる。


「アランやったな! ひとまずは俺の考え通りにスキルを習得できて良かった。次はそうだな……もう一つのスキルを明日から教えてやるか? いや、先にスキル上限数の確認が先か。あとは……位階はどうするかな。それを上げるのはまだ早いか? 今が2だからしばらくはそのままにしておくか? この辺には弱い魔物しかいないし、仮に上げれたとしても最初から強い力に振り回されると繊細な動きがな……」


 ヒュージさんに褒められたと思ったら、彼は一人でぶつぶつと何かを言いだした。

 多分いつもの考えてるポーズをしているのかな? あの人は考えるとき、いつも顎に手を当てて顎を撫でるんだよなぁ。

 僕は今ママに攻撃を受けているから、それを見ることはできないけど。


 それにしても、鍛えても鍛えても、この攻撃には敵わないのはなぜなんだろう?

 でも、少しは耐えれる時間が増えてきたのかな? それが増えてもそれと比例して、攻撃時間も増えてるから苦しさは変わらないだよな……

 そんな風に考えていると限界が近くなってきたので、ママの背中をポンポンと軽く叩く。

 すると、ママは僕が苦しがっているのに気が付いたのか気が付いていないのかわからないが、やっと放してくれた。


「あらあら、ごめんなさいね? アランちゃんが可愛すぎるのがいけないのよ? それに、ママが抱きしめる時間が増えるように、あなたは鍛錬しているのよね?」


 あれ? 僕はママのおっぱい攻撃に耐えるために……鍛錬を始めたんだっけ?

 あれあれ? どこでそうなったのかな? うーん、よくわからない……

 でも、ママを見ると凄くにこにこしてるからいいかなー?

 そして、ママはキラキラとした目で僕を見つめていた。

 あっ、これは聞かれたからには答えないとダメなやつで……ママは僕の返事を待っているの……かな?


「う、うん。そ、そうだよ……」


 その笑顔に逆らえない僕は――力なく答えた。


「やっぱそうだったのね。うんうん、ママは当然そうだって知っていたのよ? もちろん、違う理由も少しはあると思うけどね? でも、一番はママに抱きしめてもらうためだものね」


「あっ、ララさん。ちょっとアランに話しておきたいことがあるんだが、アランを借りてもいいか?」


「いいですよー。じゃあ、私はご飯支度に戻ります」


 ママはそう言うとキッチンの方へ行ってしまった。

 キッチンって言ってもリビングとくっついて、竈があったり、ご飯の支度をするためのテーブルがあるだけの場所だけど。


 そして、僕はママから救いだしてくれたヒュージさんの方へ向かう。

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