第12話 お勉強

 昨日は初めての鍛錬で少し疲れたなぁ。それでも今日も頑張るぞ!

 そうやって決意して朝の食卓に向かうと、そこには――鹿の肉があった! やったー! お肉だ!

 すぐさま僕は椅子に座り食べたい気持ちを我慢して、皆が椅子に座るのを待つ。

 少ししてから三人も椅子に座ったので、僕は一心不乱に食べ始める。


「もぐもぐ、美味しい!」


 お肉はたまにしか食べれないから、味わって食べないとね。


「あらあら、アランちゃん。そんなに嬉しそうに食べちゃって。本当にヒュージさんにはいくらお礼を言っても言い足りないわね」


「ヒュージさん、ありがと!」


「いやいや、いいんだ。アランもっと沢山食べるんだぞ。昨日の鍛錬を見る限りアランには見込みがある――いつかは……俺の叶えられなかった夢を……」


 ヒュージさんはそこまで言うと、少し暗くなった? 最後の方はぼそぼそと言ってたし。


「ヒュージありがとな? 肉もそうだが、昨日は絵本も一つ買ってくれたじゃないか。アラン、もう買ってくれた絵本は読んだのか?」


 僕はパパに首を振って返事をする。今は肉をいっぱい頬張っているから、言葉が出せないよ……

 ヒュージさんには昨日絵本をプレゼントしてもらったんだよなぁ。あの本の名前は『ヨアトルの常識』だったね。

 知識を得るためにも読んだ方がいいって言われたんだよな。

 僕は色々なことを知りたいけど、それでもどっちかというと物語とか楽しい絵本が良かったかな?

 ヒュージさんがわざわざ買ってきてくれた物だから我儘は言わないけどね。


「アラン。ご飯を食べ終わったら、昨日プレゼントした絵本を読んでおくんだぞ? その時間を利用して、俺はまた狩りに行ってくる。昨日は鹿一匹捕るのに結構時間を食ってしまったからな。あの森の土地勘がまだまだなくてうまく獲物を見つけられなかった。だから、今日は少し森を歩いて土地勘を養ってくる。アランはまだまだ知らないことがあると思うから、今からさまざまな知識を蓄えておくんだ。まぁ、絵本だからありきたりのことしか書いてないけどな。絵本を読み終わったら、村はずれまで走るのと素振りを忘れるなよ」


 その言葉に対し、僕は首を縦に振って返事をする。いつものママなら『ちゃんと返事をしなさい』って言うけど、今日は言われなかった。

 きっと、ママもお肉に夢中になっているからかな? そう思い、ママの方を見ると頬がパンパンに膨らんでいた。

 ついでにパパの方も見たけど、そちらも同じ状態だった。


 皆でご飯を食べ終わった後は、ママはご飯の片づけを始めて、パパは村の人に行商っていうのをしに行って、ヒュージさんは森に行った。

 ヒュージさんに言われた通りに絵本を読むために、僕は自分の部屋へ行く。


 本当は昨日読んでおきたかったんだけどなぁ。でも、初めて鍛錬をしたからなのかわからないけど、晩御飯を食べた後はすぐに眠たくなっちゃって、あっという間に寝ちゃったんだよね。


 部屋に着いた僕はベッドに腰かける。そして、傍らにある『ヨアトルの常識』の絵本を手に持ってページを開く。

 また声を出して読もうかな。その方が文字を読む練習にもなるってママも言ってたからね。



――ヨアトルの常識――


 『ヨアトルの世界の暦』

 ヨアトルが出来てから何年経ったのかは定かではない。

 この世界の日にちは、年と月と日で表す。

 現在はヨアトル歴1467年である。(※この本をいつ読むかで年は変わってくる)

 月は1月から12月まであり、日は1日から30日まである。

 日を30回数えると月は1つ増える。

 1日は24時間あり、1時間は60分である。

 これから大人になっていくにしたがって、時間と日にちの概念は必要になってくるだろう。


 『ヨアトルの世界の単位』

 この世界において距離を表す単位はセンチメートルや、メートルや、キロメートルである。

 1センチメートルが100集まると、1メートルになる。

 1メートルが1000集まると、1キロメートルになる。

 ヨアトルの世界では、重さを表すのはグラムとキログラムを使う。

 1グラムが1000集まると、1キログラムになる。


 『ヨアトルの教育』

 この世界に現在ある教育機関は、主に貴族や大商人の子息息女が通う総合学校や、主に冒険者を目指す者が通う冒険者学校がある。

 計算や難しい文字の読み書きは、ここで習う。その他にもさまざまなことを学校で学べるが、その内容はこの絵本では割合する。


 『ヨアトルの国々』

 ヨアトルにはいくつもの国がある。

 カサンドラ王国、イーサリオン王国、トレブラント王国、ブリジン神聖教国、ヨーラン帝国など。

 他にもさまざまな国があり、その土地、その土地でいろいろな特徴がある。



「ふー、今日はここまでにしよう。物語の絵本だと楽しいけど、こういう絵本だと少しだけ疲れるかな? 新しいことを覚えれるから、そういう楽しみはあるんだけどなぁ」


 次は走りにいかないとー。

 僕はリビングに移動して、ママに声をかける。


「ママー、僕は村はずれまで走りに行ってくるね」


「わかったわ。気を付けてね? 転ばないようにするのよ?」


 転ばないよー? 疲れた後は倒れ込むけどね!


「大丈夫だよ。帰って来たら、またお茶を飲んでもいいかな?」


「わかったわ。お茶を用意しておくね。いってらっしゃい」


 ママはそう言って、僕を軽く抱きしめてくれた。

 抱きしめてくれたときに、それがおっぱい攻撃じゃないときは凄く嬉しい!

 僕もぎゅって抱き返してから、外に向かって歩きだした。


 その後は、少し『ぜぇぜぇ』しながら村はずれまで走った。それから少し休憩して、また家まで走る。

 家に帰ってからはママにお茶を貰って椅子に座り、お茶を飲みながら休憩をする。

 その後、素振りを250回してから僕は昨日感じたことが正しかったのかな? と感じ始めていた。

 なんとなくだけど、昨日より木剣が軽く感じるような気がするし、走ってからの休憩も昨日よりも短く済んだ気がするなー。

 もっと続けていけば、気のせいじゃないって思うくらいになるのかな?

 あんまり考えすぎてもダメかー。僕はヒュージさんの言う通りに鍛えていけばいいかな?


 うーん、そういえばパパが帰って来たり、ヒュージさんが来て鍛えてくれるようになったりで、少し忘れてたけど、ライアル、ゼリオン、オリーブ、キャメリーはどうしてるかなー?


 僕が走る村はずれまでの道のりは、いつも遊んでいた空き地の方向とは違うから、あの四人を見かけることはなかったんだよなぁ。

 この村はそんなに大きくないっていうから村を散歩していたら、いつかは見かけるのかもしれないけど。

 もし会ったとしたら、僕はそのとき皆になんて声をかければいいんだろう? どんな顔をして会えばいいんだろう?


 皆のことを考えると、なんか胸が少し痛くなってくるなぁ。この前はママが治してくれたけど。

 うん! あんまり考えないようにしよう!

 これからはヒュージさんにいっぱい鍛えてもらうから遊ぶ暇はなくなると思うしね。

 それに水汲みの手伝いももっとするようにして……あっ! ヒュージさんに頼んだら僕が使えるような薪割り用の斧とか貰えないかな?

 でも、そこまで言うのは我儘かぁ。

 パパにお願いしてみようかな? ママが薪割りしているのを見ていると、怪我したら嫌だなって思うしなー。


 その後も250回の素振りを数セット繰り返してたら、日が暮れてきてパパとヒュージさんが帰って来た。

 ヒュージさんはウサギを4匹も狩って来てくれた! わーい!


 晩御飯を食べているときに、パパに小さい斧を頼んだら買ってくれることになった。

 やったー、嬉しいなー。僕は喜びながらホクホク顔で美味しいウサギのお肉を食べていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る