第10話 水汲みをしよう
んー、目が覚めてきたなぁ。多分、朝になったのかな?
僕が目を開けると目の前にママの顔があった。ママは温かいなー。
一度ぎゅーってママに抱きついてから、僕はママを起こさないようにと静かにベッドを降りた。
ママは起きていないみたいだから、どうしようかな?
あっ、裏の井戸に行って水汲みをしよう!
そーっと部屋を出てからリビングを通り、僕はそのまま家の裏までやって来た。
リビングではヒュージさんがいびきをかいて寝ていた。
「がーがー」うるさかったなー。
パパは多分だけど、パパたちのお部屋にいるんじゃないかなぁ。
せっかく帰って来たんだから、ママも昨日はパパの所で寝ても良かったのにね。
でも、そうすると少し寂しいな……
うー、それよりも水汲みをしよう! バケツは……と、あそこにあるなー。よし、バケツを持ってと。
僕はバケツを持って、そのまま井戸へと移動する。井戸は近いから行きは楽なんだよなー。
バケツを井戸の横に置いて、井戸の滑車を引っ張って水を汲み上げる。
うー、重い……でも、頑張らないと。
井戸の桶を満タンにして引っ張り上げるのは無理だったので、桶の中の水を半分くらいしてから僕はなんとか引っ張り上げた。
そして、これをバケツに移してと。
そんなことを4回繰り返したら、バケツは満タンになった。
だけど、いざバケツを持とうとしたら……重くて持てなかった……
しょうがないのでバケツの水を半分捨てて、それから家に戻ってタライに水を入れる。
その後も同じことを3回繰り返して、なんとかタライにそこそこの水を入れることができた。
「そろそろママが起きてるかな?」
そんなことを一人呟きながら家の中に入る。家に入るとママはもう起きていて朝ご飯の支度をしていた。
ヒュージさんはまだいびきをかいて寝ていた。ママが朝ご飯の支度をしてるのに寝てるのかー。
まっ、ヒュージさんのことはいいかー。
僕は背後からママに声をかける。
「ママー、僕タライに水を入れてきたよ。半分くらい入ったかな? 頑張ったよ!」
料理の手を止めてママは僕の方に振り返った。その顔はいつも通りにこにこだった。
「あらら、アランちゃんは頑張ったのね? 偉いわねー。それじゃあ、そろそろパパを起こして来てくれる? 行商で疲れてるだろうからもっと寝かせてあげたいけど、ご飯がもうすぐできるからね」
「はーい!」
僕はパパたちの部屋に向かって歩きだした。
僕がドアを開けると、すやすやと寝ているパパがいた。近くによって声をかけるかなー。
すぐ起きてくれたらいいけどね。
「パパー、起こしにきたよ! 起きてー。ママがご飯支度してるよ!」
呼んでもすぐに起きなかったので、パパのお腹の上に「えいっ!」って乗ってみる。
「うぐぐ……な、なんだ……」
「あ、パパ起きた? 起こしに来たよー」
「あぁ、アランか。起こしに来てくれたのか? ありがとな? じゃあ、起きるからちょっとお腹から降りてくれるか? ちょっとな? お腹のさらに下の方に当たって……な? パパ痛いんだ……」
失敗失敗、痛くしちゃった……
「パパ、ごめんね?」
「いや、大丈夫だ。朝になると少し元気になってしまってな? そこに乗られると、痛かっただけだからな」
良くわからないことをパパが言っていたので、僕は首を傾げた。
んー、よくわからないけど、まぁいいか。
「それより起きたならリビングに来てねー。僕は先に行ってるよ」
そう言って僕は駆けだした。
僕がリビングまで来ると、ヒュージさんが起きていた。
欠伸をしているけどー。
彼は一度こちらを見てから、口を開いた。
「ふぁー、はぁ、良く寝たかな。おっ、アランの坊や、おはようだな! 今日から鍛錬だな!」
昨日からヒュージさんは僕のことを『アランの坊や』って呼んだり、『アラン』って呼んだりするなー。
ややこしいから、どっちかにして欲しい。
「ヒュージさん。僕のことは『アランの坊や』か『アラン』か、どっちかに決めて呼んで?」
「お、おう。そうだな……これから鍛錬するのに『坊や』はないか。すまないな? これからはアランって呼ぶことにするぜ」
「わかったー」
そう返事をしたところで、パパがリビングに入って来た。パパも欠伸をしている。
ヒュージさんと同じだなぁ。
「ララ、ヒュージさん、おはよう」
「おはよう、あなた」
「タリオさん、おはよう」
「あ、俺の方が全然年下なんで、俺のことはタリオって呼んで下さい。昨日言おうと思ってて忘れてたなぁ」
「了解だ。俺も堅苦しいのは好きじゃないから、タリオは俺のことをヒュージって呼んでくれ。あと、たまーに敬語になってるときがあるけど、敬語もいらないぜ」
二人のそんなやり取りの後に、ママの声が聞こえてきた
「はーい、それじゃあご飯を並べるわよー。皆、座ってね」
その後は、皆でママが作った美味しいご飯を食べた。ご飯といっても、黒パンと野菜スープだけどね。
たまには朝からお肉も食べたいけど、我儘はいけないからなぁ。
僕がそんなことを考えて食べていると、ヒュージさんがママとパパに向かって口を開いた。
「こうやってご飯を食べさせてもらって贅沢を言うわじゃないんだけど、これからアランを鍛えるためにも、もう少し肉を食べさせたいんだ。だから、この村の近くにある森に入り狩りをして肉を取りたいんだが、森に獲物はいるか?」
「ええ、この村までは来ないけど、狩人が森に入って鹿やウサギを狩って来ているわ。たまに大物で熊もいるかなぁ」
「そうか、これからは狩りの時間も取りつつ訓練をしていこう」
「ヒュージ、いいのか? そこまで世話になってしまって……」
「ああ、いいってことよ。俺が好きでしてるんだからな!」
彼は、そういって大きな口を開けて笑っていた。こういう人を豪快な人って言うんだったかな?
「よし! アランそろそろ鍛錬を始めてみるか?」
ご飯を食べ終わって、少しのんびりしていたらヒュージさんが僕にそう言ってきた。
「はい!」
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