第9話 『初めての魔法の世界』の絵本
ヒュージさんの言葉を聞いて僕は考えた。
ライアル、ゼリオン、オリーブ、キャメリーは冒険者になるみたいだけど、僕はどうしたいんだろう?
色々と沢山のことを知りたいって気持ちはあるんだけど、それなら冒険者っていうのがいいのかな?
僕に冒険者のお友達なんているわけがないし、ママとパパも冒険者にそこまで詳しくもない。
だから僕が知ってるのはママに聞いた内容しかなくて、それは魔物を倒したり、ダンジョンに潜ったり、お宝を集めたりとか色々とする人たちってことかなー。
さまざまな場所に行くのなら、その分色々なことを見たり聞いたりできるかな?
うーん、でも、色々な所に行くってことはママとパパと離れなきゃいけないのかな?
それは嫌だなぁ……
「Aランクの君を雇うようなお金も何もないけど、いいのかい? ご飯くらいなら当然出せるけど」
僕がうーん、うーんって唸っていたらパパがヒュージさんに話しかけていた。
「ああ、大丈夫だ。タリオさんとララさんは大丈夫かい? 俺の我儘で勝手に話を進めちまったが……そして、アランも」
「私は平気よ? アランちゃんと一緒にいられる時間が少し減ると思うけど、その分逞しくなってくれるならね。お金がある家なら、洗礼の日からもう鍛錬を始めたりするって聞くし。そうはいってもこの村にはそんな人はいないけど。いるのは遊びの延長で鍛錬する子どもくらいかしら。そう考えると、ヒュージさんが鍛錬をしてくれるっていうのは凄くありがたいわ」
「俺もだ。正直言うと……俺の家はお世辞にも裕福とは言えない。貧しいとまでも言わないが。俺は……アランには、もっともっと何不自由なく暮らしていって欲しいと思っている。こいつは好奇心旺盛でなぁ。日頃から知りたいことも多いだろうに……こいつは多分我慢してくれているんだ」
そう言ってパパは僕の方を見た。
うーん、知りたいことは沢山あるけど、そこまで凄く我慢してるわけじゃないんだけどなぁ。
ママがいつもお金ないからねーって言ってるし。
「そうか、二人ともありがとよ。アランはどうだ? 『努力』のギフトの効果を知りたくないか? 力をつけてもっともっとさまざまなことができるようになりたくないか? 色々なことを知りたくないか? まぁ、ここまで言って、ギフトの効果が見当違いだったら俺は謝るしかできないが……仮にそうなっても、ある程度のことは教えてやるぞ」
良くわからないけどヒュージさんはいい人みたいだし、その人がここまで言ってくれるなら頑張ってみよう!
僕が将来どうしたいかなんてまだまだ全然わからないけど、一番に思うのはパパとママがもっともっと一緒にいられるるといいなってことだ。
そのためには僕がお金を稼いでパパのお店を出してあげたい!
そうしたら、パパは行商っていうのに行かなくてすむし、そうしたらママはずっとパパと一緒にいられるからね!
「僕やるよ! よろしくお願いします! ヒュージさん!」
僕はそう言って、ヒュージさんに頭を下げた。
そんな僕をパパとママは横から抱きしめてくれた。
鍛錬は明日から始めるってことになって鍛錬の時間とか方法とかを三人で話し合うみたいだ。
暇を持て余した僕は、さっきもらった絵本を読むために自分の部屋に移動した。
まずはどっちから読もうかな? やっぱりここは『初めての魔法の世界』かなー。
魔法って格好いいし! 僕は声に出して読んでみる。
――初めての魔法の世界――
ヨアトルの世界では魔法というものがあり、それは女神ヨアトル様からの贈り物だ。
知的生命体にさまざまな適性をプレゼントした時に、魔法の適正というものが知的生命体には備わった。
※幻獣や一部の魔物にも備わっているが、それは省略する。
魔法には4種類の属性がある。
火、水、風、土だ。
火属性は風属性に強い。
水属性は火属性に強い。
風属性は土属性に強い。
土属性は水属性に強い。
人族には、火、水、風、土魔法の平均的な適性がある。
獣族には、魔法の適性がない。
エルフ族には、火、水、風、土魔法の平均以上の適性があり、その中でも風魔法の適正は優れている。
龍人族には、優れた火魔法の適正がある。
ドワーフ族には、平均以下の火魔法の適性がある。
魔族には、火、水、風、土魔法の平均以上の適性があり、その中でも土魔法と水魔法の適正は優れている。
これは基礎であり、魔法系のギフトを持っていれば話は違ってくる。
人族で『魔法使い』のギフトを持っていると、平均以上の火、水、風、土魔法の適性が付く。
人族で『火魔法』のギフトを持っていると、平均以上の火魔法の適性が付く。
獣人族で『魔法使い』のギフトを持っていると、火、水、風、土魔法の平均的な適性が付く。
獣人族で『火魔法』のギフトを持っていると、平均より劣る火魔法の適性が付く。
魔力は誰しもが持っており、それを体内で操り、魔力を具現化して決まった現象を起こすことを魔法と言う。
適性が同じでも、消費する魔力の多さ、魔力を操ることの器用さ(これを魔力操作という)、明確なイメージの有無で魔法の威力は変わってくる。
例えば、火魔法の初歩である<ファイアーボール>ならば、消費する魔力が少なくて扱いが上手でない者は指先に火を灯す程度だが、消費する魔力がとても多く魔力操作がとても上手ならば、発現するファイアーボールの大きさは大岩のようになるだろう。
魔力を感知する方法は目を瞑って胸の前で両手を合わせる。
そうすると、徐々に手の平に向かって流れていく『何か』を感じることができるはずだ。
その何かが『魔力』である。
魔力を感知できたら、次は上手に魔力を操作することになる。
その方法は手の平で感じた魔力を自身の意思で操作して身体全体に行き渡らせる。
それを繰り返し行うことで、どんどん魔力の流れがスムーズになっていくことだろう。
慣れてきたら目を瞑らなくても、魔力を感知することができるようになる。
そして、魔力を手の平に集めて魔法名を唱えることで魔法は発動する。
この時に唱えることができる魔法は位階の段階と、その魔法の適性値で決まる。
僕はここまで読んだら眠くなってきたのでベッドに入って眠ることにした。
んー、結構難しかったなぁ。
少しわからないところがあったから、そこは明日三人に聞いてみようかな。
いつもはママと寝てるんだけど、ママはまだお話をしているのかな?
まぁ、いいかー。先に寝ちゃおう。
「ママ、パパ、ヒュージさん、おやすみー」
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