第5話 空地へ
ママは久し振りに走ったとか言ってから、椅子に座って休んでたけど、僕はまだまだ元気いっぱいだからお外に遊びに行くことにした!
いつもの空き地に行くと、そこには近所の子どもたちがいた。いつも通りに皆いるかなー?
僕は空き地にいる子たちを見て、いつもの面子が全員揃っているのか確認する。
えっと……ライアルと、ゼリオンと、オリーブと、キャメリーがいるかなー。
空き地を見渡すと、皆が揃って遊んでいるのが見えた。
うんうん、皆、いるみたいだなー。皆は、家の手伝い終わったのかなー?
僕も家の手伝いをできるときはしているんだけど、行商人っていうのをしているお父さんはたまにしか家に帰って来ないから、お父さんの手伝いはできないしなー。
だから、ママの手伝いで家の裏の方にある井戸から少しだけ水を汲んだりしかできないんだよなぁ。
まだまだ僕にはバケツ一杯の水は重すぎて困っちゃう。
薪割りもしたいんだけどママが危ないって言うし、それに、まだ僕はあの斧を持てないからなー。
まぁ、今はそのことはいいかー。僕は皆に声をかけるために近付く。
「おーい!」
僕の言葉に気が付いた四人が、僕の方に近づいて来た。
「おっ、アランじゃん」
「おー、アラン! 来たかー。そういえば、お前は今日が洗礼の日だったよな」
「あっ、そういえばそうだったわね! アランどうだったの?」
「アラン君はどんなギフトを貰ったのかなー?」
そして、それぞれがギフトのことを聞いてきた。ライアルだけには聞かれていないかな?
まぁ、それはいいとして、僕は一瞬伝えるか迷った。この四人は僕より2歳年上だ。
そんな彼らはすでに洗礼の儀が終わっている。そして、全員からなんのギフトだったか聞いていたことを思いだした。
それに、全員凄くワクワクしたような顔をしているし。皆のギフトを聞いておいて、僕だけ言わないわけにはいかないか。
まぁ、皆、勝手に教えてくれたんだけどなぁ。
「僕は『努力』っていうギフトだったよー」
僕の言葉を聞いた四人は、何それ? みたいな顔をしている。うーん、ママと神父のおじいちゃんの反応と同じような感じだ。
やっぱり、誰も知らないのかな? まぁ、僕たちはまだ子どもだから知ってるギフトなんて、有名なもの以外はないと思うけど。
僕は絵本に出てくるのくらいは知ってるけど、それ以外だとあんまり知らないなー。
ギフトやそれ以外にも、もっと色々知りたいことはあるんだけど、そのためには本を買わないとダメで……
でも、家にはそんなお金はないみたい。困ってないからいいんだけどね!
「『努力』とか聞いたことないなぁ。もっと有名なのじゃないとな! 俺みたいに! 俺は『魔法使い』だから、聞けば誰でも一発でわかるぜぇ」
「俺も『努力』なんて聞いたことがない。大体『努力』ってなんだよ? 俺が聞いた話では、ギフトを貰ったら、そのギフトに関連したことは勝手に上手くなっていくっていうのに。まぁ、努力っていうか、鍛錬したらその上達速度も上がるって言うけど」
「ねぇ。私も聞いたことないな。『努力』を『努力』するの? 意味わかんないー。きゃははは」
「オリーブ! 笑ったらアラン君が可哀相よー? ギフトは何が貰えるかなんて誰にもわからないんだから。でも、あなたの気持ちはわかるけどね。アラン君は格好いいから期待してたんだけどねぇ」
うーん、言わない方が良かったのかな? 『努力』ってダメなギフトなのかなー?
貰えるギフトはなんでもいいと思ってたけど、友達に……こうやって言われるようなギフトだとは思わなかったなぁ。
確か、この四人はかなり良いギフトだって、大人たちが褒めてたからなぁ。
ライアルが『魔法使い』で、ゼリオンが『戦士』で、オリーブが『シーフ』で、キャメリーが『僧侶』だったはず。
四人は大きくなったら冒険者になって、パーティーを組むとか言ってた。
「大きくなったら組むパーティーにアランも入れてやろうと思ってたけど、これはさすがに無理だなー。俺たちはこの四人ですでにバランスがいいって大人たちも言ってくれてるから、俺たちは四人パーティーかなぁ」
「あーあ、本当に残念。私のお気に入りのアラン君といつかパーティー組みたかったけど、出来が悪い子と一緒にいると冒険者になった後は、危険が多くなるってパパもママも言ってたしなぁ」
「だねぇ。俺たちは遊びながらだけど、少しずつギフトに慣れるように鍛錬もしてるから正直『努力』のアランはなー。こいつと一緒に遊ぶと僕たちのできることが減るかもしれないから、これからは少し考えないとね」
自分自身で『努力』っていうギフトがどのような効果を持っているのかも知らなかったので、皆が言うことを黙って聞く。
何か言おうにも実際に僕のギフトは弱いのかもしれないし……この四人と冒険者になるとか、そんなことはまだ全然考えてなかったし、決めてなかったけど、それでも……
もし、一緒に冒険者になったとしたら……僕は足手まといになって皆を危険な目に合わせるかもしれないのかな?
そして、皆にとっては僕はいらない子なのかな? 昨日まで普通に遊んでいたんだけどな……
僕はなぜか段々と胸の奥が痛くなってきたので、皆に「帰るね」とだけ言って、空き地から立ち去る。
僕の内心なんて彼ら気にもしてくれず、「じゃーなー」とか「ばいばーい」って言ってた。
あーあ、せっかくお天気良かったのになー。皆と一緒に鬼ごっこをして遊びたかったのに。
はーあ、なんか悲しいなぁ。明日からどうしよう? もう、あの四人と遊ぶことはないのかな?
僕がいたら鍛錬の邪魔みたいなことを言ってたし……
でも、この辺には僕と同じくらいの歳の子は、ライアル、ゼリオン、オリーブ、キャメリーしかいないんだよなぁ。
家に向かって歩いている僕は、空き地に向かった時と全く気分が違っていた。
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