第4話 ギフト
「これで洗礼の儀は終わりねー。アランちゃんの洗礼の日が無事に終わって、ママはとても嬉しいわ」
ママはそう言って、また僕におっぱい攻撃をしてきた。うーん、これ苦しいよぉー。
「これこれ、アランが苦しんでおるではないか。ララよ、その辺にしておくのじゃ」
僕がふがふがとしていると、神父のおじいちゃんが助け船を出してくれた。
「ぷはー」
はぁ、助かった。神父のおじいちゃんはやっぱり良い人だね!
ママの方を見ると、その表情は少し拗ねたものだった。
「だってー、アランちゃんが可愛すぎるからいけないのよー? ママは悪くないもん!」
「ララよ、『もん』って、お主……まぁ、今はいいかの。それよりもアランよ、ギフトカードの表示はどうするかの? ここで表示してもいいし、家に帰ってから表示してもいい。ここでするなら、儂が知ってるものならばアドバイスもできよう。全てのギフトを知っているわけではないがの。また、これはまだまだアランに話すのは早いのじゃが……もし、冒険者となるなら、それらの者は他人にギフトを易々と教えない者が多い。その辺は注意が必要じゃ」
冒険者かー、確か、ママが言うには、魔物を倒したりダンジョンに潜ったりお宝を集めたりとか……色々とする人たちのことだったかなー。
僕はまだ将来のことなんて考えてもいないし、良くわからないかなー。
ただ、ここで表示すると神父のおじいちゃんがアドバイスをくれるみたいだから、その方がいいんじゃないかな? 僕はギフトのことなんて全然わからないしなぁ。
「私はここで神父さんにアドバイスをもらうことは賛成よ? ママもパパもギフトに詳しいわけじゃないからね」
ママも賛成ならそうしようー。
「じゃあ、ギフトカードの表示をするねー。えっと……『ギフトカード・オープン』」
その言葉とともに、僕の目の前に透明な板が浮かび上がった。これは確か触れないんだったよなー。
僕はもう簡単な文字は大体読めるから、書いてある文字も簡単なのだといいんだけどなー。
そう思って、僕はギフトカードの書かれている文字を見ていく。
えっと……
ギフトカード
名前:アラン
位階:1
ギフト:努力
んー、ギフトの後の文字が読めないなー。これは知らない字だなぁ。
ママか神父のおじいちゃんにギフトの所になんて書いてあるか聞こうと思って、僕は二人の方に顔を向けた。
すると、二人の顔は何か良くわからないものを見たような顔をしていた。
二人ともどうしたんだろう?
「ママー、神父のおじいちゃんー。僕のギフトはなんて書いてあるの? この字は読めないんだよねー」
「あっ、ごめんなさい。アランちゃん。私はギフトにはあんまり詳しくないの。それもあってか見たことも聞いたこともないギフトだったから戸惑っちゃったわ」
ママは少し慌てたように、そう言った。続いて神父のおじいちゃんが口を開く。
「うむ、儂は長らく神父をしていきて色々なギフトを見てきたのじゃが、『努力』というギフトは初めて見たのぉ。ギフトは名前から大体の効果を想像するしかなくてのぉ? ’’このギフトの効果はこうなっている’’などの情報は、研究者が今まであったさまざまなギフトの情報を集めて精査し、それを研究結果として本を出していたりするのじゃ」
「私はその本は見たことはないけど、話には聞いているわ。過去の偉人やそれ以外の人もだけど、ギフトを得てから実感した効果をギフトの研究家がさまざまな人に聞いて、それらをまとめて本にしているって」
うーん、今度はママもおじいちゃんも眉間に皺を寄せているなー。何かまずかったのかなー?
僕のギフトはダメなギフト? そんな風に不安に駆られていると、僕の様子を見た神父のおじいちゃんが慌てて僕の頭を撫でてくれた。
そして、髭をいじりながら口を開く。
「おお、すまんすまん。儂とララがこのような態度じゃと、アランは心配になっただろう? 本当に済まないのぉ。儂はなんだかんだいっても、ギフトを知ってる数は多かったのじゃ。そのことがまとめられている専門書も読んだことがあるしの。そんな儂でも知らなかったギフトじゃったから、少し戸惑ったわい」
「そうなんだー」
そっかー。ただ、神父のおじいちゃんが知らないギフトだったってことかー。
「アドバイスをできるかもと言っておいて恥ずかしい限りじゃが、これはアランが自分で効果を見つけないといけないのぉ。昨日までの自分と、今日からの自分の中で違いを見付けだしてそれを実感していくのじゃ」
「わかったー」
「ママもできることは協力するから、なんでも言ってね?」
「はーい」
「では、そろそろギフトカードを非表示にするのじゃ」
僕は神父のおじいちゃんの言葉を聞いて、さっき教えてもらった言葉を言う。
「ええと……『ギフトカード・クローズ』」
そう言った途端に、僕の目の前にあったギフトカードは音もなく消え去った。
「よし、それでは洗礼の部屋を退出するかの、あとは何か聞きたいことはないかの? ララにアランよ」
僕は神父のおじいちゃんに聞いてみたいことを少し考えたけど、今のところは特にないかな?
「私は大丈夫よ、でも、この先何か聞きたくなったらアドバイスを貰いに来るかもしれないわ」
「僕も大丈夫ー」
「うむ。それでは、また今後何かあったら気軽に来るがよい」
その後、また僕はママに抱きかかえられてしまった。うーん、嬉しいけど恥ずかしいなー。
ママに抱きかかえられたままお外に出ると、お外はまだお天気が良くてポカポカとしたままだった。
うー、走りたいよー! うーん、ママにお願いしてみようかな?
でも、ママ悲しむかなー? あっ、良いこと考えた!
「ママー、僕はヨアトル様にギフトを貰ったから、今からママと一緒に走ってお家に帰りたいんだけど……いいかな?」
ママの顔色を窺いながら僕が聞いてみると、少し考えた素振りを見せた後に「いいわよ」と言ってくれた。
「わーい! ママ大好きー!」
一度ママに抱きついてから地面に降ろしてもらうと、僕はママと一緒に駆けだした。
最初に走りだした時はいつものような感じだったけど、お家に着くまで走り続けると少しだけ前より楽に走れて足が速くなったかも? って思った。
でも、お家に着いたら僕もママも「ぜぇ、ぜぇ」ってなってたから気のせいかもしれないなー。
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