2日目

「家よりも外のが温かいのね。」


私が田舎へ戻って数日が経過した。こんなことを言っては馬鹿にされるかもしれないが、田舎は寒い。気温が低いのはもちろんなのだが、何と言っても家の中が寒い。寒すぎて炬燵から身体を出すことができない。このままでは干物女になってしまう。


マンション暮らしに慣れてしまったせいなのか、家の中で厚着をするという習慣にどうしても馴染めない。上着を羽織ればいいものを、寒さに震える私は家族からすれば滑稽な姿だろう。


しかしながら、妙なプライドが働くのだ。ここで上着を羽織れば確かに寒さはしのげるかもしれない。このだが、そうは私の中の問屋が卸さない。誰とも違うオンリーワンな人間でありたいと願う私が、父や母や彼と同じようにすることを許さないのだ。


そんな私の心中を察してか、彼がおもむろに出かけようと言った。そういえば、昨日も結局どこにも行かなかったし、私が退屈していると感じてのことだろう。


「行きます。」


彼に呼ばれてすぐに炬燵を抜け出す私を見て、父母は嬉しそうな顔をしていた。父母に言われるのと、彼に言われるのでは威力が違いすぎるのだ。これは仕方ない。



彼が上着を羽織り、靴を履いて玄関をでる。私も同じようにして、玄関をでた。

夕暮れの散歩道を歩く。スマートフォンの通知がないことを確認して下り坂を歩いていく。



「午前中は日が当たってたけどね、夕方になると家の中のほうが寒くなるんだよ。マンションと違って一軒家はスキマ風もあるからね。ほら、そんなに寒くないでしょ?」


そう語りかける彼に寄り添って、私はこう言った


「家よりも外のが温かいのね、なんか不思議な感じ。」


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