第5話 であいわかれ

僕とツチノコは1日をかけて砂漠を抜け、翌朝に湖畔に来た。

ビーバーとあの、独特な挨拶をしてくるプレーリーがいるはずだ。


・・・3年前までは。


視界に木で作られた家が飛び込んできた。


「・・・俺もフレンズの全員の能力を把握している訳じゃない。気を抜くなよ」


「はい・・・・」


木の家の中から、こっそりとその様子を伺っていた。


「来たでありますか。ビーバー殿、作戦実行でありますよ」


「了解っす・・・」


二人はサーバルを連れて、下へと降りた。


「あっ...」


僕は足を止めた。


「ん・・・」


ツチノコも足を止めた。


「お久しぶりでありまーす!」


走ってくるのは、プレーリードックだ。気持ち顔を前に出している様に見えた。

ツチノコは縄を出現させ、動きを封じ込めた。


「な、なにするでありますかっ!」


「何しに出てきた」


「な、何って・・・」


「あっ!サーバルちゃん!」


僕は後ろの方にビーバーと共にいたサーバルに気づいた。


「か、かばんちゃん!」


サーバルは駆けだし、僕の元へと飛び込んだ。


「会いたかったよ!かばんちゃん!」


「無事でよかった!」



「ツチノコ殿!わたくしらはサーバルを保護していただけでありますよ!」


そうプレーリードックが弁明すると、ツチノコは縄を解いた。


「・・・・」


だが、ツチノコの顔が晴れる事は無かった。

僕とサーバルが再びツチノコの元へ戻る。

それと引き換えをするようにプレーリーは後ろにいるビーバーの元へと下がっていった。


「サーバルちゃんを見つけてくれてありがとうございます。

とある事情で離れ離れになっちゃって...」


「いえいえ、当たり前のことをしただけでありますよ」


「久しぶりに会えてよかったっす」


二人はそう言った。


「ツチノコさん、次はアライさんを探しま・・・」


唐突に気持ちが変になった。


(ん・・・)


「はぁ...はぁ...かばんちゃん...私...、怖いよ...」


サーバルが顔色を悪くして、僕に擦り寄る。


(なんだろう・・・、言葉には出せないけど・・・不安感が襲ってくる)


「ま、まんまと罠に嵌めるなんて...、そうだよな・・・?」


「わ・・・わな・・・」



「やっぱり、サーバルを盾として使うのは躊躇いがあるっす」


「だから、こういう手法を取ったのでありますよ」



「て、てめぇら...、お前らも能力持ちだったのか...」



「これはビーバー殿の能力であります」


「“他者を不安にさせる能力”っすね...」



「な、何が目的だ・・・」



「図書館から遠ざける事であります」


「別に倒したりはしないっす」



「じゃあ、またどこかで会いましょう!であります!」



僕たちの地面が崩れ、僕とサーバル、ツチノコさんは別々に穴に落ちる。


「うわっ!」


「何っ!?」



「これは“地中を変化させる能力”であります!」


という声が聞こえた。

僕とサーバルは、何も言葉を発せずに、そのまま穴へと吸い込まれていった。






「フェネックー!かばんさーん!どこなのだー!!」


(おや?あの声は・・・)


上空を飛んでいた助手はその声にいったん動きを止め、姿を探った。


「みんなどこにいるのだーっ!」


「・・・探しましたよ」


「あっ、助手なのだ!フェネックやかばんさんを知ってるか?」


「それについて話があるのです。私と共に図書館へ来てください」


「わかったのだ」


助手はアライさんを抱え、図書館まで飛び立った。






「・・・ん?ここは・・・」


目を開けると檻の中に入れられている。


「お久しぶりです。ツチノコ・・・」


「博士・・・」


「余計な事をしてくれましたね。しかし、遅れた遅延は取り戻せばいいのです」


「何を実行する気だ・・・」


「決まってるじゃないですか。“外の世界”に行く機械なのです」


「まさか・・・」


「人間を排除し、フレンズの楽園をもう一つ作るに決まってるじゃないですか」


「何故人間を嫌うんだ・・・、お前は」


「自然の理なのです。強い者が地上を支配する。

私は強い力を手に入れたのですから、当たり前じゃないですか」


「やっぱり、力に溺れたのか、見損なったぜ」


「あなたなんかに失望されても、別にいいですよ。私を信用している“仲間”もいますし」






「サ、サーバルちゃん・・・、大丈夫?」


「うーん・・・・。あれ、私何していたんだろう・・・」


「ちょっと気を失ってたんだよ。色々あって」


サーバルに言っても理解しないだろう。

そう思い無駄な説明は省いた。


「ところで、サーバルちゃん、痛い思いとかしてない?」


「痛い思い?・・・、してないよ」


(よかった・・・。能力の類には関わってないみたいだ)


「それで、ここって・・・」


サーバルが辺りを見回す。


「あの建物、カフェじゃない!?」


「あっ・・・」


確かにそうだ。


3年前、バスを動かすとき、電池が無いとか言ってここまで頑張って登って

充電をした記憶がある。


僕とサーバルが立って建物に近づこうとした時であった。


「あら、久しぶりじゃない・・・」


上空から、舞い降りるフレンズ


「ト、トキさん!」


「みゃ!」


トキは地上へは降りて来ようとせずに、カフェの屋根に座って、足を組んだ。

歌おうとはせずにポケットから透明な容器を取り出し、蓋を空け、口に入れた。


「あれ、トキ、何食べてんの?」


「これは・・・、“アメ”って言うの」


「あ、アメ?」


「舐めると...、美味しいの...」


「すっごーい!食べてみたーい!」


「・・・、いいわよ」


透明な容器から一つの飴を取り出し、サーバルに向かって投げる。

サーバルは投げられた飴を両手で掴む。


僕はサーバルの手のひらにある飴を覗き見た。


透明な白い固形。


「いただきまー・・・」


「サーバルちゃん!ダメ!」


僕は飴を摘まんでいたサーバルの右手を持ち、止めさせた。


「ええ?何で?」


「なんか、嫌な予感がしたんだ・・・」


僕はそのままトキの方を向いた。

心なしか微笑んでるように見えた。


「トキさん、アルパカさんはお元気ですか?」


と尋ねた。


「ええ...」


短く言葉を吐いた後、もう一つの透明な容器を取り出す。

そこには、一つの飴玉。真っ白いのが、確認できた。


「ほら・・・、ここに・・・」


僕の直感は的中した。


「トキさんも、能力を持ってたんですね」


「えっ?何、能力って・・・」


混乱し始めているサーバルを庇いつつ後ろに下がる。

そして、サーバルの持っていた飴を僕は手に取る。


「能力の内容は・・・、これを舐めると、相手を飴に変えるんですね」


「そうよ...」


「どうしてアルパカさんにそんな事をしたんですか...。

僕たちがごこくに行ってる間に二人に何があったんですか!」


「それはね...」

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