歩を進める
空を海に塗り替える。ひとつなぞるごとに淡い水色は深い青を経て青藍へ変わる。彩った爪と裏腹に飾り気のないシャツとパンツにロングコートを引っ掛け、少し重たいショルダーバッグを持ち上げる。底冷えするからっぽの部屋を振り返ることはせず、夜中にラーメンを食べに出掛けた時と然程変わらない気持ちでドアを開けた。今は早朝だが、すでに忙しなく街は目覚めている。行き交う車や人、電車、ざわついた建物の隙間、そうしたすべてにも少なからず愛着はあった。しかし往く。今、往かなくてはならない。そうすることでしか、体の奥にざわめいた波を打ち消すことはできないと確信しているからだ。在るべきように心は在れと知る為に、向かうところはまず海である。
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