真偽を問う

自分に付けられた「酔狂」というラベルを思い出す。手のひらで掬いあげた濁水を腕伝いに零すと、全身浸かった湯船の表面でいくつも波紋が乱れた。薄紅色のなまあたたかい水は頬まで数滴跳ねる。人がこういう姿をもってして酔狂などと指を向けているのだとしたら、少しばかり迷惑な話である。そもそも好きこのんでやっているわけではないのだから、定義が違う。こみあげる嫌悪を通して感情の精査をせんとする試みを、気狂いの嗜好と括られるのには納得しかねるが、片端から真意を説いていかないのは、まさに感情の精査に努めているからに他ならない。体を沈める水が色濃くなるたびに高揚する胸の底を暴かない限り、一つたりとも真実を口にすることはできない。

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