時を往く
ある時彼女は氷塊であり、意識を得た瞬間から見知らぬ誰かの青ざめた瞼を見ていた。ある時は川底の小石であり、頭上を行き交う川魚や照りつける太陽、人の子のはしゃぐ様などを何年も見続けた。またある時は大仰に保管される骨の中から、滑稽な格好で彼女を知ろうとする人間の姿を見た。目覚める度、そこには人なるものが存在したが、彼女はただ見つめるだけだった。人の言葉を持たず、発する器官も持つことがなく、また語りかけることができたとして、意味のある結果を招かぬだろうと推し量れたからである。幸いにして彼女はまた目覚める。人が追いつくまで何千年何万年と待ち続ける、そんな風情で、その気配は掻き消えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます