記憶を穿つ
ぴかぴかに磨きこまれた仕事道具は彼の積み上げてきた信頼を物語っていた。一流の仕事人ならば道具を身体の一部とし、欠如を補い合う伴侶として敬意を払いたまえと彼は語った。それは確かに理想論でも精神論でもなく、彼の仕事ぶりを見るにつけ、道具が一挙一動に呼応しているのを自然と目にした。それほどまでに名誉な半生を送った一流の道具は、主とともに朽ち果てたかったのだろうと思う。一人と定めた主のすべてに馴染むよう、全身全霊を投じていたのだと判る。それを今、穢さんとしている。最愛の師の唯一最後の願いのために、師の最愛たる道具からその痕跡を奪わんとしている。
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