真を見せる
入口では錆色の猫が大欠伸をしていた。彼が門番を務めているらしい路地へ一歩踏み入ると、決して交わらない人の往来がある。縦横に絡み合う道、路、径、建物の合間合間に見え隠れする人々は他人には目もくれず、目的地へ向かって自分の知る道筋を行く。それに倣い、いくつかの辻を曲がったり目眩しのような階段を昇り降りしたり、時には錆びついたフェンスを蹴り開けたりして、目的の店へ入る前に薄汚れたスーツを念入りにはたかなくてはならなかった。多少小綺麗になったところであらためて店構えを見ると、前回の訪問から随分と様変わりした。前回と言っても何ヶ月、何年と遡るわけではない。たかだか十三日ぶりの訪問だが、大体の人間にとってこの入口はいつ来ようと同じ姿であることはない。店主によって「姿見」と呼ばれるようになったそれは、文字通り、訪れたものの姿を見るのである。
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