陽を砕く
祖母から受け継いだ我が家には少し妙な小窓がある。冬の日の出に合わせたような位置と小ささで、幸いなことに海まで遮るもののないこの家へ一番に朝の光を届ける代わりに、また次の明朝までは、そこに窓があるということもわからないほど薄暗い。冴え冴えとした廊下の一角をわずか数十分照らしだすだけの明かり取り。その意図が、つい最近わかったような気がするのだ。日が昇る前にその小窓の前へ行き、瓶詰めの宝物を置く。念入りにストールを羽織り、熱々の珈琲を両手で包んで日の出を待つ。やがて巡りくるはじまりの日は瓶を照らし、色とりどりの硝子片やビー玉に乱反射して、廊下の隅に美しい偶然を描き出す。果たして、奇妙な小窓の使い方として定かであるとは言えないものの、冬の朝にひとつ煌めく粋を見つけたことは確かだ。
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