24b
「もう、置いて行かれるのは嫌だ」
〈彼〉は、月に呟く様にそう言った。話がやけに耳にまとわりついている。〈あの〉言葉がやけに深い気がして、それが自分を映しているようにも見えた。
少し止まって天を仰いでいて、彼が気がついてた時には大分あの二人との距離があった、でも構いやしない。再度自分の居場所を確認するように天を見やる。夜空は星がよく映える、〈底〉に自分がいるような気がした。――夜。この時間は大分思考が鈍るが、闇が支配し、表情の鮮明さが落ちるからこそ、たとえどんな表情をしてもうまくは伝わらないことはよくわかっていた。それは即ち、偽造も簡単ということだ、だからこそ自分はあのような言葉を返したのだ。
それとも自分の意見こそ自分への偽造なのか……そのようなことを考えながらも、彼は気分を転ずるように大きく息を吐いて急停止、離れてしまった彼らに追いつこうと歩き始めた。
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