8・自称妹と外に出た。
誰も自称妹に反応してない様だった。
試しに自称妹が道行く人を触れようとしても大家さんの時の様にただすり抜けるだけだった。
「本当に、誰も反応してくれなかった。」
自称妹は震えた声で言った。
その不安が繋いだ手から感じとれた。
「どうしよう?お兄ちゃん?」
自称妹は不安そうに僕を見る。だから僕はお兄ちゃんじゃないってのに。
「でも僕は君を認知出来るし触れる訳だ」
繋いだ手から感じる自称妹の体温は確かに実感としてある。
「や、やっぱり私達兄妹だものね」
「だから僕はお前なんて知らないっつーの」
と叱りつけると自称妹はびくりと体を震わせた。
今にも泣き出しそうだ。
めんどくせえ。
「いくら兄妹と君が言っても僕は君の事よくわからない。とりあえず、お互いの事を説明し合おう。なっ。」
ちょっと表情に愛想を含めて自称妹に言った。
自称妹はこくりと頷いた。
・・・
「私達のお家、高校から遠いから、街に住んでるお兄ちゃんのアパートから高校かよう様になったの」
自称妹は身の上を語った。
確かに僕も実家から職場まで遠いから近くに引っ越して来た。その辺の事情は当たってる。 こんな妹が居る事以外は。
「お兄ちゃんは?」
妹が僕の事情を聞いてきた。
「君の『お兄ちゃん』と変わらないよ。仕事無いから実家出て街で住んで。」
「でも、お兄ちゃんに妹なんて居ないんだよね」
「ああ、そうだ。僕は一人鳥っ子だよ」
「本当に私の事わからないの?」
「わからない」
僕はきっぱり言った。
ああ、やばい、かなり泣きそうな顔になった。
「・・・わ、私どうしたらいいのかな・・・?」
自称妹は不安そうに言った。
「・・・さ、さあ・・・?」
「・・・誰も私の事見えないみたいだし、お兄ちゃんも私の事知らないって言うし」
「気にするな。人生色々あるさ。君は若いんだからなんとかなるって。頑張って生きるんだ。」
僕は自称妹の肩をポンポン叩いてそう励ました。
自称妹は僕に何か言いたそうにじっと見つめている。
「そうじゃなくて・・・」「そうじゃなくて?」
「き、昨日まで、私、ここに住んでて、お兄ちゃんと一緒だったから・・・」
「・・・だから?」
まずいよ。まずい。この展開は。
「ここに置いてて・・・下さい」
ほら来た。やっぱりこうなるのか。
「ちょ、ちょっと困るかな、それは。」
「困る・・・?どうして?」
そりゃ困る。こんな子と一緒にいたら、おちおちAVも見れないでしょうが。
「困る。マジ困る。超困る。他当たってくれい」
「他ってどこに・・・皆、私の事気づかないのに」
「気づかれないなら、勝手に居候しても怒られないよ。大丈夫大丈夫!」
「そんなの嫌だ!」
自称妹は叫んだ。
「・・・意地悪しないでよ、お兄ちゃん・・・」
「・・・お兄ちゃんと居させてよ・・・」
自称妹は涙をポロポロ流して言った。鼻水もグショグショしている。
いやあ、困る。困るんだけどなあ。ほんと。
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