第1章 気まぐれ

第1話 追憶

 目を覚ますと、そこは静かな森だった。

 周りに広がるのは一面の緑で小鳥のさえずりさえも大きく聞こえる。

 そんな光景を眺めながら、俺はここまでの記憶をたどっていった。


 俺の住んでいる国は先日王がなくなったばかりで、王位継承に遺された王子たちが他の後継を蹴落とそうと睨み合いを続けていた。そんな中、王の寝室からある手紙が見つかった。

 曰く、王位継承権を持つのは全国民である。

 曰く、継承権は王宮地下のダンジョンの最深部にある王の宝玉をいち速く手にした者にある。

 これを見つけた王子たちは王宮内に箝口令を敷き、外に漏れぬよう企てた。そして各地の冒険者を集め、急遽地下の迷宮を解放し、迷宮攻略の開催を建前として、宝玉をいち早く手に入れさせようとしていた。

 そこに集められたは約千人、ほぼ全員が各地の冒険者であり、中には王宮直属騎士団の姿もあった。

 彼らは王宮直属と名乗ってはいるが、六人の王子にそれぞれ囲い込まれ、忠誠を国ではなく、王子に捧げているようだった。

 その騎士団たちが冒険者を仕切るらしく、俺たちは六個の集団に分けられた。当然、いきなり分けると言われ、ざわめきもあったが、彼らの上が雇い主である。すぐに落ち着いた。そして俺は第二王子の騎士団のもとにに割り振られた。

「諸君、よく集まってくれた。私は第二王子直属王宮騎士団団長の、タヌバルム・バーグだ。今回の召集は王宮地下に存在する迷宮の探索の為集まってもらった。」

 俺たちのグループの前で話すのは、30半ばの黒髪の男で、その身は純白の鎧に包まれている。

「この迷宮は先代の王が発見し、それ以降厳重に封印されていたが、先王が封印する際に本来宝物庫に仕舞われる継承の宝玉を迷宮に隠されたらしい。そこで諸君にはこの迷宮を探索してもらい、宝玉を見つけたものには相応の報酬を用意しよう。」

 俺としてはなぜ王が宝玉を持ち出せたのかが気になったが、報酬がもらえるのならば些事は気にしないことにした。なにせ前払いで一年分の生活費分を小切手で渡されたし(持ち逃げされないように、ここに来て受理するまで無効のものだが)、迷宮は何度も経験がある。俺は受けることを決めた。

「また、この説明を聞いて受けないと判断するならば、小切手の返却とともに依頼を受けなくて良いと判断するので、帰るものはこちらに小切手を渡して欲しい。」

 しかし、ここに集まったのは冒険者。生きることのため働くのもあるが、未知なものから引くようなものはいなかった。

そして俺たちは迷宮の入り口に移動し、迷宮の探索を開始した。



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