第142話勇者の力、明かされた秘密
「え!? なんで!?」
ルキの驚きの声が静かに響く。私が言わなかった言葉と態度。それだけに、その態度にこそ満足したと思われるクジットが、何度も何度も頷いていた。
「そうです。それが普通の反応ってやつです。あんさんの態度がおかしいんですよ。ほら、お仲間をじっくり見てみるです。いくら
皆あっけにとられているのはよくわかる。
いくら勇者だからといっても、首を
それが、固有能力【治癒強化】の力。通常の魔法にはない、古の魔法のようなものがそこにある。
――あれ? でも、ジェイドは本当に試したのか?
まあ、いいか。それは今、それほど重要な事じゃない。
「簡単なことだ、クジット。
この世界に召喚された
私の場合は、ただ残っただけだったけど、他の人は自分で戦って生き残ったのだという。
だから、
戦うたびに強くなる。それが
「なるほどです。それでも、もう少し疑ってもいいです。首が飛んだんです。自分で言うのもおかしな話ですが、普通は死ぬです。でも、あんさんは全くその気配すらなかったです。まるですぐ反撃が来るかのように、あっしの動きを探ってたです。しかも、お仲間と談笑しながらです。説明してもらいたいです」
それでも腑に落ちない事があるのだろう。クジットは全く引き下がる気配を見せていなかった。
確かに、
「能力は光の玉となって追いかけてくるからね。それに、ある人が残した資料と日記にも色々な事が書かれていた。特に、
組合長の残した資料。そこには様々な情報が書かれてあった。
そして、その足跡を辿れば見えてきた。組合長が何を考え、何故それを集めていたのかを。
それは、固有能力の事だけではない。
神々の事、勇者の事、精霊の事、竜の事。
そして、自らの苦悩にいたるまで、彼はそこに記していた。わざわざ、ガドシル王国の図書館に行く必要がないくらい、事実が簡潔に記されていた。
それは、自分に関する歴史の考察。そしてその後の歴史をひも解いた研究の成果。
かつて、始まりの勇者と称えられた四十八人。古の魔王を倒すために召喚された最初の四十八人。
そして彼らは後に、暗黒の四十八人と呼ばれるようになっていた。
だが、歴史はさらに記している。彼ら
そう、暗黒の四十八人に数えられ、
自らの力で自らの国を滅ぼしてしまった男は、それでも古の魔王と戦っていた。
その男こそ、後に魔王と呼ばれる賢者ダイウスト・チョイリス。
彼の生まれ変わった姿があの組合長。
星読みの魔術師シン・ドローシだということが、彼の日記に記されていた。
一つは魂を元の世界に戻す道。
そしてもう一つは、この世界の人間として歩む道だった。
組合長が、どういう気持ちでこの世界に残ったのかは分からない。でも、彼はこれ以上勇者が現れない世界を望んでいたのは明らかだ。
――今どこで何をしている? あなたは何を考えている?
ただ、今はそれを考えている時じゃない。
「
話しをしている間に、私の意志を感じたリナアスティが、皆を誘導して下がらせる。さっきルキを狙ったのは単なるあてつけに過ぎない。クジットにとっても、私を倒さなければならないことは明白だ。
「正解です。ささやかなプレゼントでも受け取るです」
放たれた拳圧を薙ぎ払った瞬間、クジットが一気に距離詰めて話しかけてきた。
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