第5話蠱毒

「お集まりのみなさん。選ばれた皆さん。おめでとう! 今回の四十八人は、どのような素晴らしいショーを見せてくれるのでしょう! ああ、始まる前から、私は感動でいっぱいです!」

電車を降り、お姉さんをつれた一郎と共に光の方に進んでいくと、突如として光の中に人がでてきた。すらりとした姿は、いわゆるマジシャンのようであり、仮面をつけたその顔は、怪人を思わせる。そして、その表情を読み取ることはできなかった。

これでも、人の顔色をうかがうのは、慣れていた。でも、仮面をつけられると難しい。笑顔の仮面もそうだけど、本当の仮面は絶対無理だ。その人物が感動していると言っているのは、生存したことなのか?

よく見ると、確かに他にも生存者がいる。おじさん、おばさんもいるけど、どちらかというと若い世代が多いように思えた。中には、小さな子供までいた……。


四十八人って言ったよな、本当にそれだけ生き残ったのか、それだけしか生き残らなかったのか……。


「ほらほら、そこの高校生。ちゃんと話を聞かないとね。今から大事な話があるんだからさ」

周りを見て考え事をしてたのがばれたのか、いつの間にかマジシャンの横にいた、小さい人に注意された。こんな状況なのに、説教されるなんて……。


恥ずかしさがあったけど、誰も私の方を向いていない。


それもそうか……。


明らかにおかしな場所に、明らかにおかしな二人組。そこに私が加わってもインパクトがない。一郎でさえ、凝視しているんだから、私もちゃんと聞こう。


あらためて、二人組を観察した。マジシャンの方は相変わらずわからないけど、もう一人の小さい方は、どこかで会った気がしていた。


でも、いったいどこで会ったんだろう……。夏なのにマフラー、上がコートで下が半ズボン。声は男のようで、顔は女のよう。こんな風変わりな人。一度見たら忘れないと思うのだけど……。


「さあ、これで状況の説明は終わりです。ショーを始めましょう。ルールは簡単。互いに殺し合ってください。生き残った方だけが、ここから出る事が出来ます」

どこからともなく、開会のファンファーレのような音が聞こえてきた。全体的に暗めの世界に、うっすらと明かりがともっていく。


しまった、全く話を聞いていなかった……。


そんな時、目の前の一郎とお姉さんがいきなり消えていた。


「一郎!」

思わず叫んだ時に、あの小さいほうの人が目の前に現れていた。


「ほら、ちゃんと聞いてないから。でも、君で最後だよ。最初の場所からゲームスタートだ」

その声と言葉と笑顔で思い出した。


「君はあの時の……」

あれは夢じゃなかったんだ。どこかに運ばれるような感覚と共に、私はこの人に会った時のことを思い出していた。

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