魔法
「そういえば、親方たちは魔法を使うときはどうやってるんですか?」
そう言ってリケが小首をかしげた。
「俺はこう、グッとやるとグワッと来るからバッとこう……」
「なるほど。リディさんは?」
身振り手振りで説明したのに、すごい速さで流されてしまった。実際のところ、うまく説明できないのだ。貰いものの力だし。
リケに聞かれたリディはおとがいに指を当てた。
「感覚的にはエイゾウさんのおっしゃったのと、そう変わりないですよ」
「そうなんですか?」
「ええ」
リケが目を丸くし、リディは小さく頷く。
「結局のところ、魔力を具体的な形にしてやる、というのが魔法になってきます。その形にする方法やコツなどはかなり人によって違っています。例えばリケさんが〝送風〟の魔法を使えるようになったとしましょう。魔力の巡らせ方や放出の仕方はエイゾウさんとも私とも違っているはずですよ」
「へえ。あれ、それじゃあ、どうやって習得するんですか?」
「教える人に感覚を聞いて、それを真似するところから始めるんですよ。そうすると、そのうち感覚がつかめてきます。でも、そのままでは魔法にはならないので、自分にあった感覚に直していくんです」
「それじゃあ、鍛冶以上に時間がかかりませんか?」
「かかりますよ」
ニッコリとリディが微笑む。ややもすると迫力を感じるほどだが、まぁ気のせいだろう。
「なので、人間では数多く使える人はあまりいないはずです。そうですよね?」
リディが俺を見た。俺は慌てて頷いてから、腕を組んで胸を張る。
「どうやったのかは詳しくは言えないけどな!」
「具体的な教え方はたいてい秘伝ですからね」
リディも納得したのか、大きく頷いた。俺の場合は貰いもので、時間をかけて習得したわけではないので、ちょっとした罪悪感があるが、鍛冶をして魔法までならともかく戦闘もその他の作業もとなると、よほどの天才でもないかぎり無理に思えるので、このまま曖昧にしておこう。
リケが再び尋ねる。
「エルフの皆さんがたくさん魔法を使えるのは?」
「私達には時間がたくさんありますからね」
「ああ……なるほど……」
この世界でもエルフはかなり長寿らしい。それはさっき本人が言っていたように魔力を取り込んでいるからだが、その長寿をもって有り余る時間を魔法習得に費やしている、ということなのだろう。
「それに、一度習得すれば、次の魔法を覚えるのはある程度簡単になりますよ。ある程度、ですけど」
「ん? それじゃあ、俺がリディに新しく習うとして、次に覚える時にはかかる時間が半分とかには?」
「ならないですね。簡単になるのは自分流にアレンジするところが既に経験済みだから早くなるだけなので」
「そうか……」
この世界でもう1つ2つ魔法が使えたら楽しいかなぁと思っていたのだが、それは過分な望みであるようだ。鍛冶屋も引退して、その時にリディの気が向いてたら教えてもらうとかにしようっと。
「それでですね、魔法は魔力を具体的な形にするものなので、魔力を固定する魔法がないのはそういうことかと」
「ああ、それはそうかもな」
魔力を何かに変換する手段手法を魔法と呼ぶのであれば、何にも変えないのは、はたして魔法と呼んでいいのか、みたいなことだろう。少なくとも、現時点のこの世界ではそれは魔法の分類にはないということになる。
「ですので、別の方法を探すか、あるいは」
リディは一度言葉を切って続ける。
「魔法を開発するか、です」
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