ささやかな納品
できあがったチェインメイルを持って、カミロの店に戻ってきた。
戻った俺たちを見つけたディアナとヘレン、そしてクルルにルーシー、ハヤテと丁稚さんが駆け寄ってくる。
「できたの!?」
と半ば詰め寄るように言ったのはディアナだ。あくまで見せかけだけであっても、自分の兄の身を守るための品には違いないし、気になるのだろう。
「ああ、バッチリだ」
俺は布に包まれたままのチェインメイルを掲げて見せた。ディアナの顔がパッと明るくなる。
後ろでヘレンはニコニコしているし、娘達も丁稚さんもどことなく嬉しそうに見える。作ったもので喜ばれるのは、何であっても嬉しいものだな。
「それじゃ、カミロんとこへ持っていってくる」
「じゃあ、アタシたちはここで待ってるよ」
「おう」
俺の手伝いをしてくれていた皆はその間、娘達と触れあう時間が少なかった。ちょっとでも取り戻してくれれば良いのだが。
家に戻ったら、水汲みの時に俺も取り戻すとするか。
「おお、エイゾウか。どうだ、うまくいったのか?」
扉をノックすると、すぐに扉を開けたカミロが、期待に満ちた眼差しで尋ねてくる。
「ああ、なんとかな。これが出来上がりだ」
そう言って、俺は布に包まれたチェインメイルをカミロに手渡した。
カミロは丁寧に布を開き、出来上がったチェインメイルを手に取る。
灯りに透かしながら、彼は細部まで入念にチェックしていく。
「ふむ……なかなか良い出来じゃないか」
「それは『良い出来』止まりってことだな」
俺が言うと、カミロはニヤリと笑った。
「出来〝だけ〟で言えばな」
「作り直すか?」
カミロは今度はかぶりを振った。
「あの時間でこれだけのものを作っただけでも十分だ。その上、出来てる部分だけ見れば普通に売りものになるものを作り直させる意味はないな」
「そう言ってもらえると嬉しいね。みんなで頑張った甲斐があったってもんだ」
「ああ、お前の腕だけじゃない。仲間の力も大きいってことだな」
カミロは満足そうに頷く。
「ま、これならマリウスも文句なしだろう。きっと喜んでくれるはずだ」
「ああ、そう願ってるよ。これで、少しでもマリウスの力になれれば」
そう言いながら、俺はチェインメイルに込めた思いを改めて噛みしめていた。
「もうこんな時間か」
ふと窓の外を見るとすっかり日が落ちている。皆は先に〝家〟に戻っていることだろう。
「よし、それじゃあ飯にしよう。祝いも兼ねてな」
カミロが意味ありげに笑う。
「祝い……? ああ、チェインメイルが完成したことか」
「そうだよ。お前の……いや、お前たちの頑張りを称えなきゃな」
そう言って、カミロは俺の肩をポンと叩いた。
「わかった。楽しみにしてるよ」
俺も笑顔で頷く。
「よし、決まりだ。ちょっと厨房に言ってくるから、先に行って待っててくれ」
そう言い残して、カミロは部屋を出ていった。
チェインメイル作りを通して、改めてカミロの友情を感じる。なんだかんだ言って、俺のことを信頼し、支えてくれる仲間なのだ。
「よし、行くとするか」
心の中でそう呟きながら、俺は〝家〟に向かった。
祝いの席で、チェインメイル完成の喜びを分かち合えるのが、今から楽しみでならない。
絆を深め合える、かけがえのないひと時になるはずだ。
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