報告会

 そのままワイワイとみんなで食事をする。話題はもちろん、俺がここを離れている間のことだ。

 思っていたとおりではあるが、こっちは特に何事も無かったらしい。

 街に行かないのと、俺がいないのでクルルが少しへそを曲げたくらいだそうだ。


 あとはほぼ普段どおりだが、全員で「これは確実に連れ帰ってくるに違いない」と話し合って、新たに部屋を作ることにしたことが普段と大きく違うところだろう。

 俺がいないので部品の生産には多少時間がかかったものの、そこはリケがちゃんと生産できたし、部屋を立てる事自体は経験済みなのでさほどの苦労はなかった、とはサーミャの言である。


「クルルがいてくれて助かったのもあるけどね」


 そうディアナが補足する。材木を運んだり、持ち上げたり、要は重機に近い作業をクルルが受け持ってくれたおかげで、想像以上に早く完成できたのだそうだ。


「何かご褒美をあげたいところだなぁ」

「何が嬉しいんだろうな?」


 俺が言うとサーミャが返す。普通の動物ならなにか特別なエサなりあげるのだろうが、彼女の場合は魔力で腹を満たしているので、食事がほとんど必要ない。

 遊ぶ、と言っても普段は簡易荷車を引っ張って遊んでいるし、俺たちが介入できて喜んで貰えることってほぼ無いような……。


「また街に連れて行ってあげるくらいしかないですね」

「そうだなぁ」


 リケが言って俺は考え込む。

 先程、俺がいなかった間に一般モデルの製品は十分な数が出来た、とリケが言っていた。

 だったら早速明日納品、はちょっと気が早いので明後日にでもカミロのところに持ち込もう。それでクルルを街に連れて行ってあげればかなり喜んでくれるはずだ。

 俺の作る分はなしでもいいんじゃなかろうか。懐には十分な余裕がある。

 カミロは売り物のバリエーションが減るが、1週間くらいならどうとでも出来るだろう。そもそもここのところは納品も無ければ本人もいなかったのだし。


 彼もそこそこの大店おおだなの店主のはずなのだが、やけにフットワークが軽いんだよな。あれで着実に成長できているのだから、商人としての手腕は確からしい。

 まぁ、俺もそこを信頼してうちの製品を任せてるんだけどな。


 そうして家の方の話を聞いているうちに夕飯を食べ終わったが、みんなが話を聞きたがったので片付けた後に話すことになった。


 俺の方はほとんど行って帰ってきた、と言う話しかない。ものすごく嫌な予感がしたので、途中でカミロに娼館へ誘われたことは伏せておいたくらいだ。

 それでもヘレン救出や、革命が起きて街が大混乱のところでは全員固唾をのんで話に聞き入っていた。


「ヘレン、苦労したのね。いつまでもうちにいていいからね」


 ディアナはすっかり涙声でヘレンに話しかけている。

 涙もろいオカンか何かのようだ。気持ちは十分にわかるが。ヘレンの方は「お、おう……」と言った風情で返事をしている。


「ドワーフは帝国のほうが多いと聞いたが、リケのところは平気なのか?」

「うちの工房は王国にあるから平気だと思いますよ。端っこですけど共和国よりですし。」

「そうなのか。じゃあとりあえずはよし、だな」


 リディのとこのエルフたちもあちこちに散ったとは言え、王国内なのは確かだし、サーミャは言わずもがなだ。

 うちの家族で帝国で起きていることに巻き込まれそうなのは、もう既に巻き込まれた俺とヘレンを除いてはいないらしい。


「そう言えば、そもそもヘレンはなんで捕まったんだ?」


 サーミャが何の気なしに話題を振った。一瞬、場が固まる。

 確かに気になることではあるが、まだ救出して間もないところで振っていい話題かどうかは、サーミャ以外の全員が掴みかねているところだったのだ。


「お、おい……」


 俺がたしなめようとすると、当のヘレンがそれを遮った。


「いや、いいんだ。みんなには聞いておいてもらいたい」


 そうして、今回の事の顛末をヘレンは話し始めた。

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