第4章 魔物討伐隊遠征編
楽しみの前に
翌日からは普通の鍛冶仕事を再開する。アポイタカラに取り掛かりたいのは山々だし、十分な収入があったとは言え、継続的な仕事というのもやっていかないと、時々来る依頼だけに頼るわけにもいかないからなぁ。
なので、サーミャとディアナに鋳造するところまでをやってもらって、そこからの仕上げを俺が行う形での高級モデルのショートソードとロングソードの作製を3日ほど行うことにする。その間、リケはナイフの製作だ。カミロ曰くは武器もそれなりに売れるが、日用品との境目にあるような、こう言ったナイフも売れ筋らしいからな。
ただ、ナイフは日用品に近いだけあって、価格が高い高級モデルよりも、お手頃感の強い一般モデルのほうがよく売れるらしい。武器の方は命を預けるからか、高くても高級モデルを買っていく人が少なくないとか。なので今はできるだけ売れ行きにそった納品量を心がけるようにしている。勿論、どれをいくつと言った発注があれば話は別だが、カミロからそう言った注文が来たことは、こないだの伯爵閣下からの要請だったハルバード以外では無い。
だから今の所、納品量は俺の胸先三寸で決まってはいる。でも、この辺りもそのうち要望が来るかも知れないのは、計算に入れておく必要があるだろうな。
魔力の話をリディさんから聞いたので、今回最初の1本はそこを意識してみる。いつもどおり、ムラのようなものを見つけて、平均化していく。この時には魔力はほとんど込められていない。薄く入り込んでいるようではあるが、特注品の時に比べるとすごく僅かだ。
やはり高級モデルと特注の一番の違いは魔力の量と言って間違いない。高級モデルでは素材そのものを最大限に活用しているから、それなりの努力と才能がいるとは思うが、普通の人間でも到達できるので、都でも何人かは近いものを作れる職人がいると言うのも納得できる。
前にも思ったが、高級モデルであればたくさん世の中に出しても問題あるまい。特注だと魔力の含有量でおかしいことを見抜く人もいるだろうから、こっちはあんまりガンガン出すのも考えものだな。
そんなことを考えながらも、3日ほどの作業は順調に進んで、次の納品までに十分な量を確保できた。リケも一般モデルのナイフを大量に製作できたようだし、高級モデルのナイフはそんなに数もいらないっぽいので、後1日俺がナイフを作れば、2週間分ではなく1週間分ではあるが次の納品には十分な量になる。まる1日休みにしてもどうにかなる計算だ。更にもう1日空いてるから、そこで何をするかだな。
アポイタカラを触るのもいいとは思うが、ミスリルで苦戦したことを考えると、3~4日くらいはまとまった時間が欲しいところではあるし、俺個人の持ち物で、別にお客さんが待っている品物でもないから、追々どこかで時間をしっかりとってそこで取り掛かろう。
なので、3日目の夕飯の時に、翌々日から2日間を休暇にすることを3人に告げた。
「じゃあ、また魚釣りにいこうぜ。」
すると、サーミャがそう提案してきた。
「まるまる2日じゃなくてどっちかだよな?」
違うとは思うが、一応確認しておかないとな。
「もちろん。」
「じゃあ、
「やった!」
大喜びするサーミャ。こう言うところは肉体年齢よりも、実際の年数っぽさがある。忘れそうになるが、年数だけで言えば5歳だからな。
「サーミャとディアナは狩りに出るなら明日出て、明後日の休みに回収する算段にしておいてくれ。」
「おう。」
「わかったわ。」
だとすると、俺の明後日の休みの午後は釣り竿作りかな……。流石にリールは作れないが、ディアナの分の竿と針がいるし。リケは多分リディさんに習った魔力の練習でナイフか何かを作るだろうと思うので、それならどのみち鍛冶場に火を入れることになるし都合がいい。
別に鍛冶の仕事が嫌になったわけではないが、同じことだけしてても気が滅入る瞬間はどうしても出てきてしまうし、こうやって休日の予定を考えるのは、前の世界でもそうだったが頑張ろうという気になってくる。やはり休みは大事なのだ。定期的な収入の確保は出来てきているし、今後はもう少し余裕を持って休日も定期的に取り入れていきたいところだな。
そんな決意も新たにした翌日、予定通り俺とリケはナイフの製作、サーミャとディアナは狩りに行った。
俺が高級モデル、リケが一般モデルで、俺はチートがあるから手早く仕上げていく。リケも腕前が上達していて、一般モデルであれば俺よりはまだ遅いものの、一般の鍛冶屋と比べたら驚くほど早く仕上げられるようになっている。これは確かにそろそろ高級モデルが作れるようになりたいだろう。
リケにとって今が一番の試練の時かも知れない。そこらの鍛冶屋よりは相当腕前がいいが、ある程度以上の腕前にはまだ到達できてはいない。それが分からないような才能や腕前であれば逆に気にならないのだろうが、リケはそれが理解できるだけの才能と腕前を持っているし、リディさんのおかげで魔力を鍛冶に取り入れる端緒を得たから、もう一つ上に至るために何が必要なのか、必死にもがいて探していることだろう。
そう言うところを親方の俺がしっかり指導できればいいのだろうが、なんせ俺のはチート仕込みの技術なので教えることが出来ない。自分が何をしているのかも、半分くらいは分かっていないのだ。俺もちゃんと自分の技術を理解して教えられるようにはしていかないといけないな。
今後の計画にまた1行を書き加えながら、俺はナイフにする板金に鎚を振り下ろすのだった。
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