製造結果 - Different finished Products Ⅱ -
◇こちら「はじめてのマギアメイル - Different finished Products -」の続きとなっております!
よろしければそちらをご覧になってからお読みください!
◇◇◇
「出来たぞ……!」
そこはユグノス国立大学校の倉庫、その44番ガレージの内部だ。
学士、クリニエ・リュジスモはそこで、一体の巨鎧と相対していた。
その姿は、およそ通常のマギアメイルとはことなる見た目。
立ちはだかる者を全て喰らうようなその容貌は、正しくクリニエが造り出そうとしていた護国の剣そのものだ。
想像以上の出来栄えに、彼は思わず涙ぐんだ。
―――これさえあれば、ユグノスは周辺国に比肩、いやそれを凌駕するほどまでに発展できる。
そんな確信がクリニエの胸の内に渦巻いていた。
「これが、僕のマギアメイルだ……!」
◇◇◇
「―――それで、クリニエ博士?」
広い倉庫で、クリニエに呼ばれたリオンは少し困惑した様子だ。
―――目の前のコレは、果たしてなんなのか。
そんな疑問が、胸のなかに産まれては渦巻き消えはしない。
「おう、なんだねリオンちゃん?」
それに対し、クリニエは至って平然と、飄々ときた態度を取っている。
その表情は正しくドヤ顔。
「してやったり」という言葉が見ただけで浮かぶほどに満足げな表情だ。
「……ちゃん付けは辞めてください、私は軍人ですよ」
「まぁまぁ、いいじゃないか!それで?」
リオンの反論も受け流し、クリニエは平然と話を続ける。
それに対し、リオンはもはや諦めたとばかりな様子をしながら、胸に渦巻く疑問をクリニエにぶつける。
「えぇと、これが、貴方の造り出したマギアメイルで?」
―――目前の異形。
これは果たして、マギアメイルなのか。
「ああ!これ以上ないくらいに斬新で、尚且つ洗練されたフォルムだろう!」
クリニエはそれに対し、当然だとばかりに胸を張る。
「……えぇと、クリニエ博士」
だが、そんな言葉を受けてもリオンの疑問は氷解しない。
―――何せ、目前のマギアメイルは人型をしていないのだから。
「私の目が節穴でないのであれば、あれは人型ではなく、獣のように見えるのですが……?」
―――目の前に鎮座しているマギアメイルは、四足歩行だった。
その見た目はまるで、狼か何かのようなフォルム。
背部には剣のようなパーツが特徴的なユニットが取り付けられており、その機体が近接戦闘に特化していることを如実に物語っている。
「うん、いい質問だ!」
「君たちから供与されたマギアメイルの残骸、あれ、四足歩行だっただろう!?」
―――違う。
リオンは思わず絶句する。
確かに、リオンが届けた時のマギアメイルの残骸は、うずくまるような姿勢だった。
見方によっては、もしかしたら犬か何かのように見えたかもしれない。
「いやぁ僕は驚愕したね、マギアメイルは人型だと聞いていたが、まさか四足獣の姿をした物も存在していたとは!」
―――だが、彼はマギアメイルが人型であるという情報を知っていた。
それがどうして、こんな獣みたいな機体になってしまうのか。
「そうして完成したのが、この『
クリニエは誇らしげに、自身の作成したマギアメイルであるという『
「四足獣型ということで、悪路の走破性能は抜群、なんであれば壁走りなんかも可能でね、他にも機構が!」
「……」
もはや、リオンは絶句する他ない。
未だかつて、四足のマギアメイルなど聞いたことがない。
確かに画期的なのかもしれない。だが、あからさまに全てを履き違えている。
「どうしたリオンちゃん!テンション低いぞー!」
クリニエがリオンの背中をバンバンとはたく。
だが、最早リオンにそれに反応する気力は一切無かった。
「これ、国になんて報告しよう……」
◇◇◇
ユグノス首都、その中心部に存在する巨大なコロッセオ。
そこでは、初の国産マギアメイルである『
観客席には軍の関係者や政治家など、国の重鎮が軒並み出席している。
「いやぁ、楽しみだ!初の自国産マギアメイルが見られるとは!」
「確か国立大のクリニエ学士が設計を担当したのだろう?それであれば出来栄えにも期待がかかかるというものだな」
「この間発注した魔弾銃も現場で大層好評だったと聞くからなぁ、此度の発明も興味深いものとなるだろうな」
各々が、過剰な期待を持ちながらこの場に集まっていた。
「……」
性能評価試験のテストパイロットは、リオンだ。
これにはリオンが適正試験にて高い適正を示したことと、「よく分からない機体のテストパイロットなど、製作を依頼した本人がやるべきだ」という、一種の貧乏くじ的な思惑が介在していた。
「リオン、始まるぞ」
「えぇと、はい……」
思わず、上ずった声で返答する。
―――果たして、この機体はこの国の御歴々に受け入れてもらえるだろうか。
「……ではこれより、我が国初の自国産マギアメイルの評価試験を開始致します」
司会がそう言うと、会場に待機していた楽器隊が一斉にファンファーレのような音色を奏で始める。
それと同時に、会場の東側のコーナーから大きな檻が運ばれてきた。
中にはつい先日捕らえられた中型の魔物がおり、今にも檻を破壊しそうな勢いで暴れている。
「捕らえた魔物か、まぁ実験相手としては上々だろうな」
その場にいた面々が今か今かと、新型マギアメイルの登場を待ちわびる。
「―――では、マギアメイル『
<操縦術式:起動>
『……リオン・サテリット、『猟犬《カニス』、出陣します』
リオンが機体の歩を進めようとした、その瞬間。
<
―――クリニエが仕込んでいた、隠し玉のシステムが起動した。
『……!!!!』
―――その瞬間、コンテナを内側から食い破り一機の獣が白日の元へと現れる。
「な、なんだ、新手の魔物か!?」
誰もが、新しい魔物の出現かと思わず身構える。
「いや待て、あの装甲は……」
だが、一人が気付いた。
二頭目の獣の身体に取り付けられている装甲が紛れもなくマギアメイルに使われるものに近しいものであることに。
「おい、何の冗談だこれは!魔物に鎧など着せて!」
会場はもはや騒然。
中には、呆れて席を外そうとする人までいる始末だ。
だが、そんな状況に一石を投じるものがいた。
「皆様、ご安心ください!」
拡声器にて全体に声をかけたのは、クリニエだ。
「あれは魔物などではございません。あれこそが、私の造り出した……」
「最新型マギアメイル、『
会場全体がざわつく。
席を立っていた人々も、困惑しながらも思わず席についた。
―――そんな状況下でも、クリニエの顔は依然としてドヤ顔だった。
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