第5話

 ユニール16歳。

 15歳までと言われていた修行はユニール自らが課した爺を倒すという目標を達するために、延びている。

 今現在、ユニールはマター操作、マター増強をおぼえ、身体操作術の強化と肉体操作術の変態を使えるようになった。


 そして今日、爺を倒したのだ。


「おい爺、俺は勝ったぞ。俺は勝ったんだよな!」

「ああ、クソガキお前の勝ちだよ。本当に負けるとは思わなかったよ。変態まで使えるようになるとは思わなかった。よくやったな。」

「これで、これでトレジャーハンターになれる!第一歩だ!」

「ああ、おめでとさん。」

「言ってたように明日、港に行って大陸に行くことにした。」

「船出してくれるのか?つのイノシシとバカウマ何匹かやれば首を縦にふるだろ。」

「そうか。」


 爺さんは珍しく声のトーンが低かった。


 次の日の朝、朝食をとった後俺は部屋に戻って干してた肉と魚、後果物をきれなくなった服を改造して作った袋に入れて居間に戻ってきた。ちなみに服は爺さんが大量に持っていた若い頃の服をもらった。今で少ない荷物の確認をしていると爺さんは自分の部屋から四角い箱を持ってきた。


「おい、ユニール。これをお前にやるよ。服の宝具だ。汚れないし、破れても治る。しかも体の赤までとってくれて清潔に保ってくれる。」

「それ、めっちゃ便利だな。」


 宝物庫はナンバリングされていると言ったが、数が若いほど便利だが、守護者が強い。そして、鍵にはマターを込めると宝物庫の方をさすという機能があるのだがそれが数が若いほど微弱になる。もちろん0は全く指さない。


「どうせ爺さんはここから出ないだろう?全部餞別としてくれよ。」

「クソガキが調子に乗りやがって、がめつすぎるんだよ。だが、お前が俺が集めた宝具超えたら全部やるよ。その服は数えないからな。ま、せいぜい頑張るんだな。」

「その言葉、ボケて忘れたら承知しねえからな!」

「もちろん。」


 少し沈黙が訪れる。海鳥がぎゃあぎゃあと鳴いている。


「………どんな守護者だろうとなめてかかるんじゃないぞ。常に手を抜くな。静と動、常に自分を操れる状態にしろ、木を見て森見て自分もみろ。」

「わかってる、爺さんから教わったこと忘れはしないさ。」

「港まで送ったら周りがうるさそうだからな、ここで別れだ。元気でな。」

「爺さんこそ、俺が宝具をもらいに来るまで。いや、0の宝具を俺が見せるまでぽっくりいくんじゃねえぞ。」

「死ねるかってんだ。ついでに1000も見せてくれよ!あと俺の名前はジュリアスだ。爺って呼ばれるのはいいけどな、お前は俺を倒したやつだ俺の名前を聞く権利がある。」

「ああ、わかった。じゃあな、ジュリアス爺!」


 別れが辛い。こんなに人間に情が湧くとは思っていなかった。だが俺には夢がある。叶えることが爺の夢でもあるのだ。

 ユニールは足に強化をかけて100メートルもの大きな一歩を踏み出した。

 彼の後ろには銀の一線が輝いていた。




 こんな気持ちの時にも邪魔する輩は現れる。バカウマだ。

「おのれ畜生め、少しは浸らせてくれよ!ま、探す手間は省けたけどな!」


 ユニールは鼻をすすって腕を振って一発ぶん殴る。首の骨を折り、後ろ足をもって森を駆け抜ける。

 また邪魔をするものが現れる。つのイノシシだ。


「おのれ畜生、俺には涙が似合わねえってか!男泣きは似合うだろうよ!ぶち殺してやる!」


 今度は手刀でけい動脈だけ切る。つのイノシシとバカウマの後ろ足を重ねてもって森を駆け抜ける。走っている間に血抜きは済んだ。街に入っても挨拶する義理はないので港に直行する。


「おい、そこの船乗り。大陸に渡りたいんだがどうすればいい。」

「ああ、父ちゃんに聞いてみるよ。父ちゃーん!」

「なんだ?」


 奥から厳ついおっさんが出てくる。ああ、こいつ飲んだくれの漁師じゃねえか。ということはこいつはあの漁師の息子か。


「大陸に渡りたいんだが船を出してくれるか?バカウマとつのイノシシをやる。」

「おめえが誰かわからんがまあ二体まるまるもらえるんだったらいいぞ。」

「交渉成立だな。」

「バカタレ、うちがいくら魚とってもバカウマの肉を食えねえんだ。でもこいつは大陸まで船出すだけで一頭まるまるだぞ。丸儲けじゃないか。」

「確かにそうか。父ちゃんの言う通りだ。」


 どうやら漁師の息子は体格も良くなって顔も良くなったが、馬鹿は治っていないようだった。


「お前はかあさんに伝えといてくれ、あと肉も持ってけ。波も落ち着いているようだしな、今すぐ船出すぞ!」


 これで大陸に出られる。ようやくトレジャーハンターになれるのだ。

 ワクワクが止まらない。ユニール・リーガガスの冒険はようやく始まろうとしている。

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