「おいどん。」

 マミーが朝からどこか、私が行ったことのない街へ出かけた。一人取り残されて、学校とバイトに向かう。デニムのスカートは初めて着たもの。マミーが唯一残したもの。暖かく包み込んでくれるもの。


 三回ぶりに会った友達の友達。腕を組んで、はぐれないようにする。(彼女がではなく、私が) 三角形のピアスはゴールドで、きらきら輝く目元とお揃い。先輩が絡まれた。駅で桃色をした彼女よりも、真っ赤な酔っ払いに。急いで場所を入れ替えて無視させる。急いで彼女を改札まで解放させ、救出完了。

「真っ赤じゃん。たくさん呑んだの?」と聞かれたらしい。うるせぇよ、この人は気に入ったから話しかけるな、触れるな、失せていろ。


 大好きな人たちと食事をする。麻婆豆腐。酸辣湯サンラータン。水餃子。胡瓜。あったかい烏龍茶に、出来立ての大学芋。三番街で笑い合いながら、冷えたビールな世界を歩く。

 他人とのズレが個性となる。正しくも、苦しい生き方をする後輩が放った言葉。

「私は私の人生を歩むんで、先生も先生の人生を歩んでください」

 賢く、攻撃性を含む彼女が羨ましい。暴力的に自分の正しさを貫こうとするも、優しく、傷付きやすくて、脆い。金平糖こんぺいとうみたいな子。

 煌めく笑顔が甘く、弾ける。


 行動の順番がふわふわする。


 曖昧さを望みすぎると霧となる。

 確実さを求めるともろが出る。

 だから昨日帰ってきた友人二人に会いたい。大好きな人たちに囲まれて、毛布に包みながら眠りたい。


 おやすみ。素敵な夢を。

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