我はしなやかである。

 第三号車に、歌い声。お母さんの「こんこんこんこん」で笑う子、どこだ。私の横で、ころころころころ、笑み浮かぶ。暖かい空気が車内に流れ、停車のアナウンスがこだまする。


 たこ焼きを食べた日のこと。

 沖縄に行く用意 (プレイリストを作ったらしい) をしたと、友人の楽しそうな声を聞きながら、小さい頃に行った風景を思い出した。まっしろに輝く地面に、透明な海。なまこがたくさん、覗き込む水にうつっていて、なぜか小さい私は怖くて、お父さんにどかしてくれと頼んでいた。きっと浜辺に打ちあがるたび、子供たちに埋められているなまこ、、、を悔やんだんだろうね。かわいそうだって思って、遠くに投げて欲しかったの。埋めていた彼らと同じく、埋めないように。生きているのに、埋葬行為は悲しいもの。


 お寿司屋さんに行ったとき、おじちゃんに海ぶどうを味見させてもらったことがあった。私はまだ小学生で、ニコニコしながら私に緑色に輝く、宝石みたいな海藻を見せてくれた。しわ混じりの手はご飯を握り、しなやかに手首を揺らしては、いつの間に握り終わっていた。魔法のようで、何度もその姿を見つめては、ぱくり。見つめては、ぱくりを繰り返した。

 初めて食べた海ぶどうは塩っぽくて、大好きだったとびっこに噛んだ感触が似ていて、親近感が湧いた。あ、これ好き。単純な脳。

 もう一口食べて、おじちゃんに笑顔を見せて一言、「おいしい」って答えた気がする。

 小さい私。


 親戚だったのかお父さんの職場の同僚だったのか覚えていないけど、水鉄砲を借りては、ぷしゅーっと人を濡らして遊んでいたのを思い出す。すんごい楽しくて、その時が初めて「水鉄砲」たる道具を知った時だった。あの時の感動も忘れられない。すごかった!!!!

 そして疲れて眠った時に見た夢の怖さも、忘れられない。くらげいっぱいの大津波が押し寄せてきて、逃げる内容。私は頑張ってサーフィンして逃げるんだけど、途中でわからなくなって、真っ暗な部屋の中、お父さんとお母さんに挟まれて、目を覚ました。怖くて、確か台風が近づいていたのかな。風が強かった気がする。あまり覚えてないや。


 文学フリマへ行った。

 緊張していたけど、大好きな作家さんと話したり、回っている間に解けていった。けれども後半、なぜか不安になって、フードを被った。赤いパーカー。紅蛇らしくしてみたいのです。けれども「被りながら話すのは失礼かしら」と思い、被ったり脱いだりを繰り返し。

 「幻影譚 II」とはちゃめちゃの国の本を一冊、セーラー服についての本と、友人のためにポストカード(おさげの女の子)を一つ買った。

 楽しかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る