無駄が一番、無駄じゃないのよ、きっと。
悲しみくれるは、乙女の役目。
笑いにくれるは、子の仕事。
涙にくれるは、私だね。
ショートヘアに刈り上げた女の子。友人に、そういう子がいる。尊敬でき、私の知っている知り合いの中で、とても賢いと思える子である。頭が良くて、へんてこりんで、リアリストで、暖かい。
私が駄目だった時期に、彼女を含め、色んな子たちが「いつも通り」の日常を教室内で作り出してくれたお陰で、今の私があると思う。窮屈じゃない、平和な時間。変な踊りと、馬鹿らしい演劇。大好きだった。嘘、大好き。
刈り上げた髪型は、ボーイッシュながらも、柔らかくエレガントであった。とっても似合っていて、思い切っているところが恰好良くて、憧れた。
昨日、彼女の可愛らしい姿をした写真を母に送った。「めっちゃかわいい」と共感して欲しくて。
今日、嫌いな奴に「最近の流行りなのか知らないけど、彼女を男だと思ったよ。刈り上げるなんてね。彼女は自分へのリスペクトがないね」と聞かされた。そして、もう一言。
彼女は低脳である。
どんな言葉よりも、心が締め付けられるのが早かった。処理できない脳内と、止まらない涙。目の前のコップを掴み取って、ぶん投げてやろうかと思った。
「意味をわかるか?」
「馬鹿みたいな感じでしょ」
「馬鹿よりも馬鹿だ」
「(死んで欲しい)」
私の大切で大好きな友人に、何のリスペクトも感じられなった。そして何より、私自身への、リスペクトも、感じられなかった。
「刈り上げたのが君じゃなくてよかった。絶対にやるなよ。別にやっても良いが、私たちの態度が変わることを知ってくれ。奇妙な眼差しで、見つめてやる」
やろうかと思った。髪を短くし、刈り上げ、七色に染めてやろうと思った。
「私のことを奇妙な目で見るなら、奇妙な目で見返してやる」そう答えた。けど、無理。過呼吸が起こり始めたから。
深呼吸。
胸を抑え、クソ野郎に抱かれている妹に微笑む。
かわいいこ。かわいそうなこ。わたしのいもうと。さいきん、ひとりでたちあがれるように、なったの。きらいなあいつに、なかゆびがたてられるよう、おしえないとね。そのすてきなえがおで、しねといえるよう、がんばらないとね。いきる。わたしは、
「別に君が何をしようとも良いが、もうこのチームにいられなくなることを覚悟するんだな」家族のことを、チームとして考えているの。一人一人、助け合いながら生きるの。だって、家族以外、誰もいないからね。
タトゥーを入れまくっていようが、特殊な髪型・髪色をしてようが、ピアスを付けまくろうが、スカリフィケーションをしてようが、理解されにくい趣味があろうが、レズでもゲイでもバイでも、トランスでも何だって良いじゃん。
知性がない?
逆よ。自分の個性、好きなことの表現の仕方を知っているのよ。凄いじゃない。自分の「当たり前」の中で生きようとする方が、知性が低いのよ。豊かさなんて、実らないし、感性も死ぬ。森羅万象が狭いのよ。(昨日、師匠に教えてもらった言葉なの。好き)
メイクをしまくろうが、アクセサリーを付けまくろうが、何だろうが、いいじゃん。似合っていればいいじゃん。本人がその姿に安心できるならいいじゃない。
エレガントじゃない?
そんなの逆だよ。「知性」に溢れていたら出てくる言葉だよ。ショートヘアの女性なんて、エレガントさを身に纏っているじゃない。繊細なタトゥー、紫色も髪色なんて、お上品よ。付けまくっているピアスなんて、芸術よ。スカリフィケーションなんて「命」に溢れているわ。
エレガントさなんて、何事にもあるのよ。私の太ももの三本線だって、エレガント。ハゲだって、エレガント。汗っかきな身体も、太っているお腹周りも、筋肉だらけでも、背が低くても、高くても、鼻が高くても、低くても、髪色が黒くても、明るくても、肌の色素が濃くたって、薄くたって、みんなエレガントなのよ。
だからそれ以上、私の友人を、私を、貶さないで。リスペクトされたいなら、されるような人になって。
何が「明日には喧嘩して、もう友達じゃなくなるのよ」よ。何が「遠くへ行って、連絡が途絶えるかもしれないのよ」だ。そんなの知らない。今、彼女は大好きな人の一人なの。
「私に変われと言うのなら、あなたも変わるべきだと思うわ。例えば、その性格」
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