枯れかけた紫陽花、錆色に。

 今日、何の緊張もせずに、自分に起こったこと、嫌だったこと、自分のことをハッキリと、誤魔化さずに人に言えた。そうしてパニックが起こった理由を話したところ「それじゃあパニック、起こるよね」と話に眉をひそめてくれた。私にではなく、理解してくれなかった人への、感情だった。何だか、嬉しくなってしまった。


 ハッキリと私のことを知っているのは、母以外では、片手で数えられるほどしかいない。別に隠したりしてる訳じゃないけど、自分から「聞いて聞いて!」とやりたくないだけ。

 そして同じように「聞きたい聞きたい!」って騒ぐ人には、何も言わないようにして、誤魔化している。そういう人ほど、言う必要がないもの。どうして、てめぇなんかに言わねぇといけねぇんだ。黙ってろって感じなのである。


 私は「頭が良い」らしい。どういう定義でそのようなことを言ったのかわからないけど、彼がそういうのだから、彼の中ではそうなのだろう。

 頭が良いってなんだろうな。私は持っている知識を様々な形で使用できる人のことを、頭が良いって思う。いや、「賢い」かな。知識だけを持っていても、使えなきゃ無駄でしかないわ。

 そう、なれれば……なっていればいいな。


 ご飯を一緒に食べ、意味もなく町を散歩した。知っている道、知らない道、迷子を繰り返しながら、目的地のない場所へ歩んでいく。天からは雨が降り、時々止まる時があり、その時は決まって、二人で傘を下ろした。

「私、ライトが反射する水溜りが好きなんだ」そう、赤くなっている信号で停止した私が言った。スマホを見るのをやめ、相手は「僕も」と返事を。


 なんだか、眠いなぁ。今日は、よく働き、歩いた日だった。楽しかった。明日は、何をしようかな。

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