五月です。満月を見ながら、新しい月になりました。

「ヒップホップっていうのは、世界を変えるためにあるんだよ」

 私の腹の底には、言葉に表せないようばドス黒い感情が湧き上がった。彼女への妬みなのか、嫉妬なのか。

 私はどうにも悔しく、背中に巻きつけられた深い執念を払えずにいた。


 先生に凄いと言ってくれた文章。嬉しい。


———


 私が男性だったら、今まで起きた嫌なことが減るだろう。知らない人にジーッと見られるのも、変な行動を取られることも、気持ちの悪い好意を抱かれることも、標的にされることも、なにも。

 なぜ女性が下に見られてしまうことが、起こるのだろう。

 そして、なぜ男性が下に見られることが、起こるのだろう。

 性別なんて、繁殖以外、なんの役にも立たないものよ。


 怖かった。久しぶりに、自分が女の子であることで恐怖を感じた。


 気持ちが悪く、誰も助けてくれない悲しみ。防衛本能がアラームを何度も鳴らすのに、接客をしないといけなくて、パニクり始めて、手が震えていった。今すぐ逃げ出したくて、目の前の男性に殴りかかりそうになる。

 落ち着け、今はこれを何とかしろ。一人で。任されたのだから。自分で、「大丈夫」だって答えたのだから。

 泣きそうになるのを堪え、なぜ謝らないといけないのかわからないものの、「すみません」と頭を下げる。

 怖い。怖い。怖い。それしか考えられなくて、冷たくなった背中で相手に向けて、距離を取る。怖い。怖い。怖い。

 私が若いから?

 私が女性だから?

 私が一人だっただから?

 怖い。怖い。怖い。人間なんて、嫌よ。


 そこから自分の中のモードが切り替わった。いつもの自分が、男性モードに。いつもなら言うと違和感のある「俺」も普通に言えて、暴力的になる。知らねぇよ。うるせぇ。黙れ。俺に話しかけてくんな。消えろ。


 怖かった。まぁ、無事だからいいんだけどね。


———


 都会の喧騒。駅中では終点前の渋滞で、人で溢れている。寝転がっている人、うずくまっている人、元気な人、怒っている人、酔っている人、肩を組みあっている人、手を繋ぎあっている人、忙しそうに走る人、品定めしている人、笑いあっている人、私。

 ヒップホッパーの集団がいた。楽しそうに踊りを語り合っていて、一人が頭を地面に擦り付け、「こう?」。笑いながら、試行錯誤。もう一人は「こうだよ」って、また楽しそうに決めていて、二人の周りにもいくつか人がいて。私はぼーっとそれを見つめていて。

 妙な苛つきは少し減って、そういえば朝ごはんねぇわって思い出せる余裕ができて、私は今ここにいる。


———


 ラッパーで、GOMESSって言う奴がいて、凄い好き。不可思議/wonderboyっていう人も好きで、もう死んでしまって新しい歌は聴けなくなったけど、とっても素敵な曲ばかり残してくれた。DAOKOちゃんの昔の、大衆向けじゃない曲も凄い好き。アーバンギャルドっているバンドも大好き。相対性理論も、The Regrettesも、みんな好き。


 明日、何食おうかな……。

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