宴会は、朝の五時まで。

 気持ちというものは、どれほど想像しても同じものとならなくて、経験しない限り、似たようなものを味わうことはできないと思う。わからないけど。


 私は家に帰るのが嫌で、下校時間になるまで出来るだけ、居残ることをしていた。現実からエスケープ。小説やら、お喋りやら、かたかたかたかた。


 寂しかった。

 欲している愛情と、暖かさの違い。

 その違いが、辛かった。

 そして、今もそう。


 小さい頃、言葉の必要性を感じていなかった。上の人——両親や先生、それらの方々に言われたことに従うのみであった。

 怒られるのが怖く、行動に移すのが嫌だった。


 家でも静かに、静かに——

 とは言っても、子供なのだからちょこっと騒いでみたりもしたけどね。


 喋らず、欲しいものがあれば「これ食べていい?」などと聞いていた。ご飯を食べたかった時も、自分から「お腹すいて」とは言わずに、母に「お腹空いてない?」と様子をみるのみ。「お腹空いてないよ」と返されたら、たとえ空いていても「そう」と答えていた。素直に「わたしね、お腹がすいた」って言えばいいものを、我慢して、我慢して、また同じ質問をしていた。


 今思えば、あの時の私は何を考え、そのようなことをしていたのか。もっと「あれが欲しい」「あれがしてみたい」とか、積極的に自分の意見を発していれば、よかったのに。自分のそういうところが、あまり好きじゃない。


 先輩さんたちに「私、何人に見えますか?」と聞いたところ、「トルコ」と答えられた。理由は「アジアとヨーロッパのちょうど混ざっているところだから」と。いいね。行ってみたいな。


 あのね、もう、頑張ってる人も、頑張ってない人も、生きてるだけですげぇってことを気づいて欲しい。生きてるだけで、すげぇじゃん……。将来のこととか、目標とか、意味とか、何でもいい。生きるという、最大のエネルギーを行なっている。それだけで、素晴らしいのです。

 しみじみ、しーみじみ、じみしみ、じしみみ、そう思います。


 さよならだけが人生だ。

 さよならだけが人生だけども、またいつかどこかで会えるだろう。

 私はただ、微笑み、愉快になるのみである。

 別れ側の空気はいまだに慣れず、背中を向けて逃げ出す気持ち。ありがとうとお疲れさまと、またねの言葉で、寝ぼけた瞼が閉まり出す。

 さよならだけが人生だ。

 月はなかったが、星が見え、初めて会った少女と共の空を見た。建物の照明が眩しく、恥ずかしがり屋の星々は、姿をあまり見せなかった。けれども、やはり光っていて、綺麗で、私は少女と見える星の数を数えていった。

 いくつあったかは、忘れてしまったが、きっと五つ以上はあった。思っていたよりも、沢山あった記憶が残っているから。

 さよならだけが人生だ。

 どれだけ共に過ごした仲だとしても、その方々の過去を知らないし、語られたところで、はぁ……だし。そして相手も私のことを知らない。

 さよならだけが人生だ。

 ソフトドリンク欄に「カシスオレンジ」があり、興味半分で注文した。甘ったるく、先輩から貰ったマンゴーの飴と似た味がした。あまり、好みではない。飴は良いけど、飲み物のしてはいけないね。

 さよならだけが人生だ。

 皿に残された一本の手羽先。誰も手を触れず、「解散にしよう」という言葉を聞き、悲しくなった。虚しさは、朝の五時。爪の珊瑚色が微かに明るくなった空に反射する。青い看板と色が合い、私の服装について褒めてくれたのを思い出す。「勉強になります!」こんな言葉を、昨日学んだ。(あれ、今日かな……?)

 さよならだけが人生だ。

 さよならだけが、人生だ。

 さよならだけが、人生だけども、またいつかどこかで会えるだろう。何故なら私が、そう望むから。


 おやすみなさい。無理、もう一度寝る。

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